北朝鮮の咸鏡北道で、個人によるコメの流通・販売を全面的に取り締まる大規模な取り締まりが行われていることが分かった。デイリーNKの複数の現地情報筋が伝えた。

咸鏡北道の情報筋によると、中央当局が「個人のコメ流通・販売を遮断せよ」との指示を下したことを受け、道人民委員会商業局と道安全局が合同で集中取り締まりに乗り出している。中央の指示は道内の全ての市・郡に伝達され、特に行政中心地である清津市や鏡城郡、穏城郡では、個人によるコメの売買が活発な地域として重点的に規制が強化されているという。

清津市では、各区域人民委員会の商業部門が市場管理所を通じて「コメ個人販売禁止」を掲示し、違反者にはコメの無償没収や罰金処分を科す方針を公表した。これに伴い、市内の新岩区域、松坪区域、浦項区域の市場では、取り締まり要員が入口に配置され、住民が持ち歩く袋や包みの中身を一つひとつ検査しているとされる。

今月中旬には、清津市の松坪市場で大麦や豆と一緒に隠して持ち込んだコメを販売しようとした女性が取り締まりに遭い、持っていた穀物袋を丸ごと没収され、その場で泣き崩れる一幕もあったという。

同様の取り締まりは鏡城郡でも確認されている。郡人民委員会は里単位の人民班会議を通じて住民に対し、「コメは国家の糧穀販売所でのみ購入せよ」と指示。市場で販売できるジャガイモや大麦、豆などの食用穀物に、少しでもコメを混ぜて売れば「私的利潤追求行為」と見なして全量を没収すると通告した。

情報筋は「国家が食糧流通の統制権を取り戻そうとする措置だ」と説明した上で、「今月初めから取り締まりが本格化し、住民の不満は高まっている。市場はもちろん、路地、駅前、さらには通勤途中にコメを持っているだけでも即座に取り締まられるほどだ」と語った。

これまで取り締まりに遭っても、取り締まり員にタバコや酒などのワイロを渡して見逃してもらう慣行があったが、現在は「ワイロが全く通用しない」とされる。

一部の住民は、コメを所有する家に夜間こっそり出向き、1~2キロ単位で買い、胸元に隠して持ち帰るという。

「コメを買うためにスパイのように行動したのは初めてだ」「今ではコメを買うことも出来ない」と住民は嘆いており、当局の措置に対する批判が強まっているという。

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