北朝鮮軍当局が最近、ロシア戦線に派兵された北朝鮮兵士のいわゆる「自爆による英雄談」を題材とした思想教育を強化し、軍人に対し「命を捧げれば永生を享受する」といった極端な犠牲精神を繰り返し注入していることが分かった。忠誠心を高めるための体系的な政治思想学習の一環とみられる。

北朝鮮内部の軍事情に詳しい情報筋がデイリーNKに伝えたところによると、北朝鮮軍は週に少なくとも2回以上の政治思想学習で、ロシア・ウクライナ戦争で自爆を選択した派兵兵士の「英雄的偉勲」を重点的に強調しているという。

核心は、最高司令官である金正恩国務委員長の命令を受け、命を投げ出した兵士たちの“忠誠心”を称えることであり、「ロシア軍でさえ成し遂げられなかった特別な戦果を達成した」とする宣伝も併せて行われているとされる。

特に軍内部では「命を捧げれば永生を得る」として犠牲を露骨に奨励しており、「自爆勇士に学ぼう」との新たなスローガンまで登場しているという。

情報筋は「教育方式自体は過去と大きく変わらないものの、死を恐れずに犠牲となれば永生するといった表現は確実に強まっている」と指摘する。

北朝鮮当局は戦場で死亡した兵士を「決死の精神で最高指導者の命令を受けた英雄」と美化しており、兵士個人の生存権が守られないまま犠牲が強いられている実態を示している。

「命を捧げれば永生する」という表現は、金日成・金正日時代から続く「首領永生論」と同じ流れにあり、指導者を超越的存在へと押し上げ、宗教的概念で包装することで個人の犠牲を美徳化する手法だとみられる。

こうした教育は徹底して忠誠心の強化を目的としている。情報筋は「ロシア戦争への参加意義は『北朝鮮・ロシア友好強化』程度に触れるのみで、核心は金正恩最高司令官への揺るぎない忠誠実践だ」と述べた。つまり、国際情勢についてはほとんど触れず、「とにかく忠誠を示すことが重要」と説いているというわけだ。

一方、20代前半の兵士らは形式的に教育へ参加し、全体的には諦めムードが漂っているとされる。ただし、一部では長年にわたる洗脳教育の影響で忠誠心や犠牲意欲を示す者も存在すると情報筋は伝えた。

こうした中、北朝鮮軍内部では、同様の思想教育を繰り返すことで兵士の戦意を引き上げられるか疑問視する声も出ている。

情報筋は「軍幹部も、何十年も続きマンネリと化した教育が100%成功するとは考えていない」とし、「本当に兵士が戦場で命を投げ出せるかが問題であり、教育手法や内容の調整は不可避だとの見方が強まっている」と述べた。

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