韓国の独立系メディア「サンドタイムズ」によれば、北朝鮮当局が9月初旬、平壌市内の名門大学に通う青年大学生約20人と芸術関係者らを対象に、韓国ドラマやKポップを流布したとして大規模な公開思想闘争を行っていたことが分かった。関係筋によると、対象者は舞台上に立たされ、自己批判を強要されたうえ、退学や処罰を示唆する「人生を破滅させかねない警告」を突き付けられたという。

今回の思想闘争は、金正恩国務委員長の中国訪問直後に開催された点で注目される。体制引き締めを一段と強める意図があったとみられ、事件後、平壌市内の大学街では学生らの動揺が広がり、学内の雰囲気は一気に冷え込んだと伝えられている。

ただ、当事者が退学処分などで済んだのであれば、まだ「幸運」だった可能性もある。北朝鮮では近年、韓流コンテンツを視聴・流布した未成年者に対しても容赦ない処罰が下されてきた。10代の少年少女が公開裁判にかけられ、懲役刑を宣告された事例も確認されている。

環境が劣悪で、あるゆる人権侵害のはびこる北朝鮮の刑務所から、五体満足で出所するのはきわめて難しい。懲役刑そのものが、実質的な「遅効性の処刑」であるとも言える。

さらに当局は、公開裁判で泣き叫び、恐怖に震える女子高校生の姿を撮影し、その映像を住民に敢えて見せることで、社会全体に恐怖心を植え付けているとされる。見せしめによる統制は、韓流排除を国家的課題と位置付ける北朝鮮の姿勢を象徴している。

外部情報の流入が若者世代を中心に拡大するなか、北朝鮮当局は思想統制を一層強化している。文化的接触すら「体制への脅威」とみなされる現実は、同国社会が抱える閉塞と不安を如実に物語っている。

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