北朝鮮の金正恩総書記の後継者説がささやかれる金ジュエ氏が、2026年に入って存在感を強めている。新春カウントダウンライブや新年の金日成・金正日氏の霊廟の参拝で意図的にセンターに配置された。

最高指導者以外の人物が明らかに真ん中に位置する配置で報道されることは、これまでの北朝鮮ではなかったことだ。

異例の報道は、ジュエ氏だけではない。金正恩氏は1月5日、ロシア派兵中に戦死した北朝鮮兵を追悼する「海外軍事作戦戦闘偉勲記念館」の建設現場を視察した。ジュエ氏、李雪主夫人、金与正労働党副部長が同行、すなわち金正恩ファミリーが勢揃いしたわけだが、全員がスコップを手に汗をかく異例の様子が報じられた。金正恩氏はジュエ氏と与正氏を乗せて意気揚揚とフォークリフトを運転するなど、セレブ路線だったジュエ氏と李雪主氏のイメージを覆す映像となった。

複数の韓国メディアによると、韓国の統一部は、北朝鮮の最近の動向について「基本的には後継構図を念頭に置いているが、近ごろは『家庭の姿』や『社会主義的大家庭』をより強調している」との見方を示した。そのうえで「年初の動きを見ると、後継構図だけで捉えるべきではない」とも指摘した。

政治的なメッセージはともかく、金正恩氏が“我がファミリーはいつも労働者と共にいる!”というイメージを打ち出していることは間違いない。また、労働党会議のひな壇にならぶクラスの幹部達も、力仕事をさせていることから、“幹部の立場に甘んじることなく汗水ながせ”というアピールともいえる。

いずれにせよ、こうした一連の動きは、家族的な演出や象徴的な行事にとどまらず、後継問題を制度や実務の段階へと進めるための準備過程として捉える必要がある。第9回労働党大会で公式な職責が与えられるかどうかは、金ジュエ氏が単なる「象徴」から実際の「政治的存在」へと移っていくのかを見極める一つの目安となるだろう。

2026年が直ちに体制移行の出発点になると断言することは難しいが、後継構図の正当化や可視化が少しずつ進む節目となる可能性はあり、今後も党や軍、宣伝分野での扱いを丁寧に見ていく必要がある。

編集部おすすめ