エストニアは昨年末、韓国・ハンファ・エアロスペース製多連装ロケットシステム(MLRS)「K239チュンム」を6基導入するための契約を約2億9,000万ユーロで締結した。配備は2027年後半から開始され、3種類のミサイルや訓練支援、運用後の補修・支援も含まれる。

契約には将来的な追加調達枠も設けられた。

ロシアへの抑止力強化とNATO連携深化の一手

エストニア国防省は、同国がすでに米国製のHIMARSロケットシステムを取得済みであることを踏まえつつ、チュンムを「補完的な深層打撃能力」と位置づけると説明している。HIMARSは精密打撃能力に優れる一方、生産能力や納期の制約があると指摘されるため、供給源の多角化が戦略的選択となった。

チュンムは8×8車体に二連の発射ポッドを搭載し、最大約290キロまでの長距離ミサイルも発射可能な高い機動性を持つ。これにより、前線だけでなく敵後方の指揮・後方支援拠点にも圧力をかけうる火力が付与される。エストニアの位置するバルト地域はロシアとの国境に近く、短い警戒時間での対応が求められるため、深層打撃能力は抑止効果の強化にもつながる。

供給の確実性と産業連携

チュンム導入の背景には、供給の確実性の確保もある。米国製兵器の需要が世界的に高まるなか、HIMARS等の納入遅延が懸念されていることから、迅速な調達と運用開始が可能な装備を取り込む必要性が浮上した。韓国側は生産能力の高さをアピールし、2027年までの納入スケジュールを提示している。

また、契約にはエストニア国内防衛産業への投資条項が含まれており、ハンファは調達額の約2割に当たる投資を同国に行う計画だ。現地企業との技術協力や部品供給の枠組み構築が進められ、戦時における維持・補修能力の底上げにもつながる見込みだ。

専門家は、エストニアの今回の装備選定はNATO全体の前線防衛戦略の一環だと評価する。多様な供給源を持つことで盟主国に依存しすぎない防衛体制を構築し、複合的な火力網を形成する狙いがある。

また、ポーランドが同じくチュンムを導入・生産協力の枠組みを進めていることは、同地域での共同運用や訓練の機会増加につながると指摘される。

エストニア国防省は「強力で迅速な対応能力は抑止の基盤であり、チュンムはその重要な一角を担う」と述べ、同盟国との連携強化に期待を示した。

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