北朝鮮メディアが、中国の習近平国家主席夫妻に対する金正恩国務委員長の新年年賀状を、極めて簡略な形で扱ったことが注目されている。韓国の独立系メディア「サンドタイムズ(ST)」が18日付で伝えた。

朝鮮中央通信など北朝鮮メディアは18日、金正恩氏が「中華人民共和国主席と夫人」に年賀状を送ったと報じたが、習近平氏の名前には触れず、国家名と職責のみを淡々と記した。しかも単独記事ではなく、「各国の党・国家指導者らに年賀状を送った」という記事の中で、ベトナムやシンガポール、中央アジア諸国など8カ国の首脳と並列的に列挙したにすぎなかった。年賀状の具体的な内容も一切公開されていない。

北朝鮮メディアは今月1日にも、習主席夫妻から金正恩氏が年賀状を受け取った事実を報じているが、その際も扱いは簡素だった。今回は習氏の名前すら省かれており、北朝鮮にとって最大の政治・経済的後ろ盾とされる中国の最高指導者への対応としては侮辱的といえる。STは、こうした報道姿勢が「中朝関係が表向きの印象以上に険悪な局面にあることを示唆している」と指摘する。

特に今回の報道は、金正恩氏が習主席から年賀状を受け取ったとの報道から17日後にようやく出たもので、外交消息筋は「本音では本当に送りたくなかったのだろう」とSTに語ったという。プーチン・ロシア大統領との書簡のやり取りを、その都度大々的に報じてきた北朝鮮の姿勢と比べると、習主席への対応は「外交的冷遇を超え、屈辱を与えるレベルだ」との見方が外交界では広がっている。

実際、北朝鮮メディアは、プーチン大統領が金正恩氏に送った新年祝電で、北ロ関係を「不敗の親善と戦闘的友誼」と表現した部分を詳細に紹介。金正恩氏の答電は労働新聞の1面トップで掲載した。金正恩氏はその中で「朝ロ関係の偉大な歴史と百年の大計を、最も親愛なるあなたと共に切り開いていることに無限の誇りを感じる」と強調している。両首脳は金正恩氏の誕生日(1月8日)を前後しても祝電を交換し、これも大々的に報じられた。

STは、北朝鮮の対中報道姿勢の背景として、複数の要因が重なっていると分析する。中国が国連安全保障理事会の対北制裁を継続していることに加え、昨年、習主席が慶州で開かれたAPEC首脳会議に出席し、李在明大統領と首脳会談を行ったこと、さらに最近、李大統領を北京に招請し韓中首脳外交を再稼働させたことへの金正恩氏の不満が反映されている可能性があるという。

中朝関係の不協和音は、北朝鮮のロシア派兵を契機に北ロ関係が急速に接近して以降、各方面で観測されてきた。昨年9月、金正恩氏が中国の抗日戦争勝利80周年記念行事に出席することが関係改善の転機になるとの見方もあったが、実際には関係はむしろ悪化したとも言われる。外交筋の間では、北朝鮮がその見返りとして受け取った実質的支援が砂糖1万9000トンにとどまったことへの不満が、内部で蓄積しているとの観測も出ているという。

北朝鮮は、天安門の楼上で金正恩氏が習近平氏、プーチン氏と並んで立った場面を対外的にほとんど言及せず、年末の労働新聞による「歴史的転換の年」特集でも、中国の戦勝記念行事出席には触れなかった。さらに最近では、北京の北朝鮮レストランで長年勤務していた女性従業員が相次いで帰国し、一部店舗では中国のテレビ放送が流れ、中国料理中心のメニューに切り替わっているとの情報もSTは伝えている。

外交消息筋は「韓中首脳会談の再開や国賓訪中を控える中で、北朝鮮の心中は複雑だったはずだ」とした上で、「今回の年賀状報道は、中朝関係が気まずさを超え、明確な亀裂局面に入りつつあることを象徴的に示している」と分析しているという。

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