米国と韓国が北朝鮮に対して距離を取り、「管理された緊張」を志向し始めているように見える一方で、看過できない重大な問題がある。それは、当事者である米韓両国が、実のところ北朝鮮とほとんど意思疎通できておらず、金正恩総書記の世界観や政治的意図を十分に理解していないという現実だ。

米国防総省が23日に発表した国家防衛戦略は、北朝鮮抑止の責任を韓国側により多く委ねる方向性を示した。韓国の防衛力強化を前提に、米国は主導から補完へと役割を調整する。だが、これは「北朝鮮という相手を理解している」ことを前提とした戦略ではない。むしろ、関与の重みを下げることで、厄介な問題を遠ざけているようにも映る。

ワシントン・ポストが18日付の社説で「完全非核化は非現実的」と論じたことも象徴的だ。理想を下ろし、現状管理へと舵を切る姿勢は合理的に見える。しかしその裏で、北朝鮮が何を恐れ、何を目標としているのかという根本的な分析は、驚くほど共有されていない。金正恩体制は、外部から見れば予測不能であるにもかかわらず、「大きな挑発はしないだろう」という希望的観測の上に置かれている。

韓国の李在明大統領も、強硬論を戒め、経済と安定を優先する現実路線を強調する。21日の記者会見では、北朝鮮との無人機侵入問題を巡る批判に対し、「高姿勢で一戦交えるのか」と反論した姿勢は理解できる。だが問題は、抑制が積み重なる中で、心理的な武装解除がなし崩し的に進んでいる点だ。

対話も理解もないまま、警戒心だけが薄れていく状況は、最も危うい。

北朝鮮は沈黙しているのではなく、語らないだけかもしれない。その沈黙の内側で、どのような戦略認識が形成されているのかを把握しないまま、米韓が「刺激しないこと」を自己目的化すれば、抑止は空洞化する。

遠巻きに見守ることと、相手を理解しないまま距離を取ることは、似て非なるものだ。意思疎通を欠いたまま進む緊張緩和は、平和ではなく、誤算への助走にすぎない。今、朝鮮半島で進んでいるのは安定ではなく、不確実性の静かな蓄積ではないのか。(編集部/金賢)

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