国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会(1718委員会)は6日までに、北朝鮮向けの人道支援事業17件について、制裁措置の適用除外を全会一致で承認した。米国の方針転換が決め手となり、反対国は出なかった。

食料や医薬品など、住民生活の改善に直結する支援が対象で、国際社会が北朝鮮に与えた政治的余地は小さくない。

金正恩体制は発足以来、最も圧迫の少ない環境に置かれている。米国は軍事的圧力を控え、トランプ政権は人権問題への関与にも消極的だ。韓国の李在明大統領も、文在寅政権ほど対北融和に積極的ではないものの、保守政権時代のように北朝鮮を追い詰める姿勢を前面に出してはいない。結果として、金正恩総書記は国政運営に集中できる、極めて稀有な時間を手にしている。

とりわけ、今回の制裁適用除外の拡大は、体制立て直しの「最後の機会」ともなり得る。慢性的な食料不足や医療崩壊、老朽化したインフラの再建など、北朝鮮が抱える構造的問題はいずれも深刻で、外部支援と国際環境の緩和なくして打開は困難だ。制裁下でも人道分野の扉が開かれた意義は極めて大きい。

しかし、金正恩氏はこの好機を生かし切れていないばかりか、むしろ自ら狭めているとの見方が強まっている。最大の誤算は、ロシアへの過度な接近と引き換えに、十分な実利を得られていない点だ。ウクライナ侵攻後、北朝鮮は弾薬や兵員の提供を通じてロシアを支援したとされるが、見返りとして得た経済的利益やエネルギー、食料支援は限定的にとどまる。国際的な孤立を深めながら、戦略的リターンを確保できていないのが実情である。

一方で、長年にわたり体制の生命線であった中国との関係は明らかに冷却化している。中国は北朝鮮の度重なるミサイル発射や核開発に不満を募らせ、経済支援や貿易面で慎重姿勢を強めている。北朝鮮側もロシア傾斜を鮮明にすることで、中国との微妙な均衡を崩してしまった。結果として、最大の後ろ盾を自ら遠ざける形となっている。

現在の国際環境は、北朝鮮にとって例外的な「追い風」である。だが、地政学的状況は一瞬で変わり得る。米政権の交代や米中対立の激化、朝鮮半島情勢の緊張再燃など、外部要因は不確実性に満ちている。今の緩和局面が長期化する保証はどこにもない。

それにもかかわらず、金正恩氏は軍事力誇示と強権統治を優先し、経済再建と外交の再構築を後回しにしている。制裁緩和の兆しが見え始めた今こそ、核・ミサイル路線の見直しと対話外交への転換が求められる局面だが、その兆候は乏しい。

国際社会が差し伸べた手をつかみ、体制と民生の再建に踏み出すのか。それとも孤立と貧困の悪循環に自ら戻るのか。

北朝鮮が直面する選択は、かつてなく重い。もしかすると、今この瞬間こそが「最後の機会」なのかもしれない。その扉を閉ざすのが、他ならぬ金正恩自身であるならば、それは体制にとって致命的な失策となるだろう。

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