北朝鮮で19日に開幕した朝鮮労働党第9回大会では、大規模な人事刷新が行われた。表向きは世代交代を印象づける布陣だが、その内実を読み解くと、金正恩体制が「女人天下」とも言うべき新たな権力構図へと舵を切りつつあることが浮かび上がる。

中心にいるのは、実妹・金与正氏と、将来の後継候補として注目される実娘・金ジュエ氏である。

最大の焦点は、金与正氏が政治局候補委員に復帰し、党部長(省長級)へと昇格した点だ。昨年11月以降、金正恩氏が公式行事に金ジュエ氏を頻繁に同伴させるようになり、「後継者演出」が本格化する中で、与正氏の影がやや薄れたとの観測もあった。しかし、今回の人事で与正氏は再び権力中枢に引き戻され、体制運営の最前線に立つ存在となった。

注目すべきは、その役割である。与正氏は対韓・対米政策の発信役として強硬姿勢を前面に出し、しばしば過激な談話で国際社会を挑発してきた。今回の昇格によって、その「切り込み隊長」としての役割は一層明確になった。金正恩体制の攻撃的メッセージを一手に引き受けることで、指導者本人と将来の後継候補を前線から守る「盾」の役割を担っているとも言える。

一方、党大会では党中央委員の半数以上が入れ替わり、抗日パルチザン第2世代の象徴的存在とされてきた崔龍海最高人民会議常任委員長が中央委員から脱落するなど、革命元老世代の退場が鮮明となった。軍・経済分野の重鎮も相次いで姿を消し、権力中枢は急速に若返った。

こうした「旧世代の整理」と並行して進むのが、女性幹部の台頭である。崔善姫外相は政治局候補委員から正式委員へ昇格し、金正恩氏の秘書役として公式行事を取り仕切る玄松月氏も党中央委員に再選され、序列を上げた。

党・政府・外交の要所に女性が配置される構図は、北朝鮮の体制史上、極めて異例だ。

この流れを、金ジュエ氏の後継構想と切り離して考えるのは難しい。

体制上層部に女性幹部を厚く配置し、実務と忠誠の両面で支える態勢を整えることで、将来的に女性指導者が登場した場合の心理的・組織的抵抗を和らげる狙いがあるとの見方が強まっている。韓国の独立系メディア「サンドタイムズ」も、今回の人事を「金ジュエ体制への地ならし」と分析した。

血統を象徴する「娘」と、統治の実務と攻撃的役割を担う「妹」。この二本柱による権力構図は、金正恩体制の現在と未来を同時に安定させようとする戦略の表れかもしれない。

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