米国のトランプ大統領は2月28日、自身のSNSでイランの最高指導者ハメネイ師(86)が死亡したと投稿し、国営イラン通信もこれを認めた。事実であれば、1月に実行されたベネズエラのマドゥロ大統領拘束に続き、いわゆる「反米国家」指導者に対する米国および同盟国の「斬首作戦」が立て続けに成功したことになる。
次に焦点となるのは北朝鮮の金正恩総書記である。もっとも、決定的な違いは北朝鮮が核武装している点にある。核抑止は依然として強力な安全保障の盾であり、米国側も軽々に軍事行動に踏み切れない。また、トランプ氏と金氏の間には首脳会談を重ねた「個人的親交」があるとされ、これが一種の政治的緩衝材として機能してきた。
しかし、こうした前提は固定的なものではない。今回のイラン攻撃については、米国内の選挙日程や政権基盤の強化を意識した政治判断が背景にあるとの分析も出ている。トランプ氏にとっては、大統領在任中の成果だけでなく、退任後の法的・政治的リスクを回避する「保身」も重要な要素となり得る。強硬姿勢を打ち出し、国民的支持を固めることが最優先となれば、対北政策も従来の対話路線から急転する可能性は否定できない。
さらに、イランの防空網が電子戦によって事実上沈黙させられたとの情報は、金正恩氏に強烈な心理的衝撃を与えるだろう。北朝鮮も防空システムの近代化を進めてきたが、米国の圧倒的な電子戦能力の前では、指導部の安全が根本から揺らぐという現実を突きつけられた形だ。不安に駆られた独裁者が、内部引き締めや軍事的示威行動をエスカレートさせれば、偶発的衝突や誤算の連鎖が起きかねない。
とりわけ懸念されるのは、危機回避を狙った強硬姿勢が、逆に相手の警戒心を高め、軍事的緊張を増幅させる悪循環である。イランの事例が示すように、米国は斬首作戦を「実行可能な選択肢」として明確に位置づけた。これは北朝鮮に対する強烈な警告であると同時に、金正恩体制にとっては、核武装だけでは生存が保証されないことを突きつけるメッセージでもある。
東アジアの安定を左右するのは、米朝双方がいかに自制と戦略的忍耐を保てるかにかかっている。だが、指導者の心理と国内政治が絡み合う状況下で、理性的判断が常に優先される保証はない。イランで起きた「斬首」の現実は、朝鮮半島情勢にも重い影を落としている。








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