北朝鮮の金正恩総書記が、海軍力強化の一環として8000トン級駆逐艦の建造構想に言及し、注目が集まっている。北朝鮮にとっては従来の主力水上艦を大きく上回る規模で、巨艦とも言えるサイズだ。

国営メディアの報道によれば、金総書記は新型駆逐艦による巡航ミサイル試射に言及した際、将来建造する艦艇として「5000トン級と8000トン級の駆逐艦」を挙げた。北朝鮮がこうした巨艦を実際に建造できるのかについては疑問の声も多い。

2025年には、約5000トン級とみられる新型駆逐艦の進水作業で重大事故が発生した。東海岸の造船所で行われた進水工程の途中、船体が大きく傾き横倒しとなったもので、金総書記自身が「犯罪的行為」と強く非難し、設計や建造に関わった関係者が拘束される異例の事態となった。

さらに、北朝鮮が公開した潜水艦の設計にも不安視する声がある。2025年末に公開された排水量約8700トン級とされる戦略原子力潜水艦は、艦橋部分に潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)発射管を多数集中させた極めて特異な外観を持つ。

専門家の間では重心バランスや構造強度への懸念が指摘され、「ひっくり返るしかない」といった厳しい評価も出ている。

こうした事例から浮かび上がるのは、北朝鮮の軍艦建造が技術や経験の蓄積よりも政治的な速度を優先して進められている可能性だ。金正恩政権は近年、海軍の近代化を強く打ち出し、新型駆逐艦や潜水艦を短期間で次々と建造する構想を示している。しかし大型艦建造には設計、試験、進水技術、艤装工程など長年の経験が不可欠で、急ぎすぎれば重大事故の再発もあり得る。

一方で、8000トン級艦艇の建造自体が技術的に不可能というわけではない。船体を複数ブロックに分けて組み立てるモジュール建造や、進水時には兵装を搭載せず重量を抑える工程管理など、合理的な建造計画を採れば安全性を高めることは可能とされる。

世界ではドック設備が限られる造船所でも数千トン級艦艇を建造した例は少なくない。

ただ、北朝鮮がこれまでのように短期間で成果を誇示する建造方針を続ければ、再び事故が起きる可能性は否定できない。巨艦建造の構想は同国海軍の野心を示す一方で、技術と経験の不足という現実も浮き彫りにしている。8000トン級という新たな挑戦は、北朝鮮の造船能力の限界を改めて試すことになりそうだ。

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