米国とイスラエルが2月28日に開始した対イラン攻撃は、単なる空爆の枠を超え、体制中枢を狙う「斬首作戦」の様相を強めている。最高指導者のアリー・ハメネイが同日の攻撃で殺害されたとされるほか、軍・情報機関幹部も相次いで標的となった。

17日にはイスラエルのカッツ国防相が、イランの最高安​全保障委員会(SNSC)のラリジャニ事務局長‌がイスラエル軍の攻撃で死亡したと発表した。

今回の作戦の特徴は、攻撃の精度の高さにある。複数の分析によれば、指導部の所在や移動経路といった極めて機微な情報が事前に把握されており、米情報機関とともに、モサドによる人的情報(HUMINT)が中核的役割を果たしたとみられる。

実際、今回の斬首作戦は突発的なものではなく、長年にわたり蓄積された工作の延長線上にある。モサドは過去十数年、イラン国内で現地協力者のリクルートを進め、核科学者の行動把握や施設内部情報の収集を行ってきた。2018年の核文書奪取や核科学者暗殺などの作戦は、その象徴的事例である。

関係者によれば、こうしたネットワークは「広く浅く」ではなく、「狭く深く」構築されてきた。対象は一般市民ではなく、軍や治安機関、関連企業に接点を持つ人物であり、長期間にわたり関係を築いた上で協力を取り付ける手法がとられている。今回の攻撃でも、指導部の居場所特定には、こうした内部協力者の情報が不可欠だった可能性が高い。

さらに特徴的なのは、人的ネットワークと技術情報の融合である。通信傍受や衛星情報など米側の技術情報と、現地の人的情報が統合されることで、標的の位置は高精度で特定された。実際、複数の高官がほぼ同時に殺害されたことは、情報のリアルタイム性と正確性を裏付けている。

もっとも、こうした浸透はイラン側の構造的脆弱性とも無縁ではない。革命体制を支えるイスラム革命防衛隊は強力な一方、内部の派閥対立や経済制裁による不満を抱えており、情報漏洩の温床となりやすいと指摘される。

米情報当局は現時点で体制崩壊の兆候はないと分析しているが、今回の斬首作戦は指導部の安全神話を大きく揺るがした。
戦場の主導権は、もはや空からの爆撃だけでなく、「国内にどれだけ深く入り込めるか」という見えない戦いに移りつつある。

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