米空軍が「時代遅れ」として退役を進めるA-10「サンダーボルトII」攻撃機が、中東のアメリカ中央軍(CENTCOM)管轄下で再び存在感を示している。昨年、在韓米軍から全機が撤収し「歴史の幕引き」が現実味を帯びるなか、皮肉にもイランを念頭に置いた大規模作戦「エピック・フューリー」での実戦投入が、この「空飛ぶ戦車」の代替不可能な能力を再証明する形となった。
繰り返される「引退撤回」
A-10は、強力な30ミリガトリング砲と厚い装甲を備え、低空・低速で地上部隊を支援する「近接航空支援(CAS)」に特化した機体だ。冷戦期、旧ソ連・ワルシャワ条約機構軍の大戦車軍団を阻止することを想定して開発されたが、湾岸戦争、アフガニスタン、イラク、そしてIS(イスラム国)掃討作戦と、米軍が関わった主要な紛争の最前線で常に「主役」を演じてきた。
空軍上層部は、ステルス性を欠く同機が中国やロシアのような高度な防空網を持つ相手には通用しないと主張し、2026年内の全機退役を強力に推進している。実際、北朝鮮を睨む最前線であった在韓米軍からは昨年、運用の効率化と機種更新の名目で全機が引き揚げられた。
しかし、現在の中東情勢がそのシナリオに疑問を投げかけている。イラン周辺での緊張高まりを受け、CENTCOMはA-10をドローン迎撃や小型舟艇の阻止任務に投入。最新鋭のF-35戦闘機ではコストが見合わず、かつ低速での精密な監視・攻撃が困難な局面において、滞空時間が長く「安価に弾丸をばらまける」A-10が、現地の指揮官から絶大な信頼を集めているのだ。
国防省関係者は「ハイテク兵器が飛び交う現代戦においても、非対称戦や局地紛争におけるA-10の圧倒的な心理的制圧効果と継戦能力は、他機種で完全に代替できるものではない」と漏らす。
米空軍は2026会計年度予算案でも全機の退役を提案しているが、今回の実戦での活躍を受け、議会内では「現場の戦力を削ぐべきではない」との慎重論が再燃する可能性がある。「老兵は死なず、ただ消え去るのみ」という言葉があるが、A-10の場合、その姿が消えるのはまだ先になりそうだ。戦場の現実が、政治的な「時代遅れ」論を再び押し返そうとしている。








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