北朝鮮当局が中朝国境地域を中心に観光事業の全面的な再稼働に乗り出し、外貨確保に総力を挙げているという。中国人観光客の誘致を本格化せよとの指示が下されたことで、事実上、新型コロナウイルス対策で停止していた「観光の門戸開放」に向けた段階に入ったとの見方が出ている。

韓国の独立系メディア・サンドタイムズは25日、北朝鮮の内閣が最近、咸鏡北道や両江道など中国との国境に接する地域の外事部門に対し、観光活性化のための指針を通達したと報じた。朝鮮労働党第9回大会の決定履行の一環として出された今回の指針は、アジア圏の観光客、特に中国人を大量に誘致し、枯渇した外貨財政を補うことに重点が置かれているという。

しかし、現場の状況は芳しくない。両江道や咸鏡北道の外事部門幹部らは、突然の観光再開指示に戸惑いを隠せず、重圧に苦しんでいるという。ある関係者は「党大会直後で業務が山積する中、すぐに中国人観光客を受け入れろと言われても、宿泊施設の暖房や食材供給をどう整えればよいのか見通しが立たない」と漏らしたと、サンドタイムズは伝えた。

こうしたゴリ押しの背景には、手っ取り早い外貨収入を求める金正恩総書記の指示がある。デイリーNKは今年1月、金正恩氏が三池淵の新設ホテルを「早く正常に開業させろ」と激怒したとの情報を伝えている。

これを受け、現場では合理性や安全性を度外視した無理な工事日程が組まれ、昼夜を問わず、まさに“戦闘”のような工事が続いたという。

そのため、なんとか党大会までに完成させることができたが、竣工式を迎えた段階でもボイラーを正常稼働させられない状態だった。真冬の三池淵は、気温が零下30度まで下がるほど寒いにもかかわらずだ。

それだけではない。観光振興策を推進する過程でも混乱が予想されている。

国境の緊張緩和と経済活性化を同時に狙うこの措置が、外部情報の流入を警戒する保衛当局(秘密警察)の統制と、外貨稼ぎを優先する外事部門の方針の衝突を誘発する可能性があるためだ。

コロナパンデミック以前には、オーバーツーリズムと言えるほど中国人客で活況を呈した時期もあった北朝鮮観光だが、今後、思惑通りに外貨を稼げるかどうかは不透明だ。

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