同じ男性が複数の女性をとっかえひっかえ「妻」にすることを「時間差一夫多妻制」と呼ぶそうです。そんなことが可能な理由の一つは、男性が「お金持ち」だから。

子どもがいて離婚する場合、子どもの父親である男性には養育費が発生します。今回は年収1000万円を超える富裕層である会社経営者、会社員、医者の父親の、離婚後の養育費の実態について取り上げたいと思います。(露木行政書士事務所代表 露木幸彦、文中すべて仮名)

同じ男性が何回も結婚し
経済的な理由で結婚できない男性も多い

 何度も結婚、離婚、再婚を繰り返し、そのたびに子どもが増えていく…例えば、メジャーリーグのダルビッシュ有選手、俳優の石田純一さん、そして女優・菊川怜さんとの結婚で話題になったカカクコムの元社長・穐田誉輝氏などが代表例ですが、同じ男性が複数の女性をとっかえひっかえ「妻」にすることを「時間差一夫多妻制」と呼ぶそうで、まさに恋愛格差社会を象徴する言葉です。

 平成22年の男性の未婚率は25歳~29歳は72%、30歳~34歳は47%、35~39歳までは35%(国勢調査)に達しており、そして出生数はわずか約107万人(厚生労働省の人口動態統計)なので、国やメディア、大手広告代理店が一丸になって「婚活ブーム」「妊活ブーム」を作り上げたのですが、5年間で未婚率に1%以上の動きはなく出生数はさらに下がってしまいました(平成27年は約100万人)

 男性からすれば一部のモテ男のせいで、ただでさえ貴重な花嫁候補を奪われ、結婚の機会が減るのだから完全に「とばっちり」。一部の金持ちのせいで「結婚できない男」が、ますます世に溢れるように思えますが、問題ではそこではありません。

 男性が「結婚へのハードル」として結婚資金(43.3%)、結婚のための住居(21.2%)、親との同居や扶養(4.6%)など経済的な理由を挙げている(国立社会保障・人口問題研究所の平成27年・出生動向基本調査)一方で、20代後半の男性(25歳~29歳)の平均年収は344万円、30代前半(30歳~34歳)で392万円、30代後半(35歳~39歳)は425万円なので(国税庁の平成26年「民間給与実態統計調査」)、結婚して妻子を扶養するにはかなり難しいといえます。

 このように、「金なし」に向かって「結婚しろ、しろ」と背中を押しても暖簾に腕押しなので無駄。それなら、いっそのこと「結婚して子どもを育てる」という社会貢献は一部の富裕層に一極集中させた方が効率的なのではないか。金持ちがどんどん結婚し、じゃんじゃん出産させた方が少子化に効くのではないか――そんな「時間差の一夫多妻制」を容認するような“暴論”が最近飛び交っています。

 一般的に「富裕層」と呼ばれるのは年収1000万円超ですが、相談実例で「時間差一夫多妻制」を実践しているといえる男性を抽出すると、職業は主に会社経営者、会社員、医者の三種類でした。これを男性の年齢が30代、40代、50代、そして未婚出産(女性が妊娠したけれど、男女は結婚せず、養育費を支払う場合)のケースに分類。

「時間差一夫多妻制」の実態について見ていきたいと思います。

専業主婦でも
十分な養育費で生活できる

■男性の職業が会社経営者の場合

《離婚した神崎八重子さんのケース》
1.夫の年収 3000万円
2.夫の年齢 35歳
3.妻の年収 0円
4.妻の年齢 24歳
5.子どもの年齢 1歳
6.離婚後の母子の住まい 妻の実家
7.子どもの想定進路 
小学校(私立)、中学校(私立)、高校(私立)、大学(私立)
8.個別の事情
付属の私立幼稚園に通っているので、同じ付属の小学校、中学校、高校、大学に進学した場合の学費をもとに計算。

⇒決定した養育費 毎月25万円を22歳まで。

 神崎八重子さんのケースでは夫と離婚せざるを得なかったにせよ、毎月25万円という十分な養育費の約束を取り付けることができたのは、夫が会社経営者で年収3000万円だからです。八重子さんは専業主婦ですが、養育費を頼りに何とか子どもを育てていくことができるでしょう。一方、30代後半(35歳~39歳)の平均年収は425万円。もし夫が毎月25万円を妻へ上納したら、手元はすっからかんで昼食をとるにも困るので、どうあがいても無理です。妻が専業主婦として家事や育児に専念することは許されません。

養育費とは別に
10万円の家賃も

《離婚した赤森楓さんのケース》
1.夫の年収 1500万円
2.夫の年齢 42歳
3.妻の年収 300万円
4.妻の年齢 35歳
5.子どもの年齢 10歳
6.離婚後の母子の住まい 夫の会社名義の10万円の賃貸住宅
7.子どもの想定進路 
小学校(公立)、中学校(私立)、高校(私立)、大学(私立)
8.個別の事情
夫の会社名義で賃貸住宅を借り、月10万円の家賃を会社が支払い、楓さんと子どもが賃貸住宅に住む予定。夫は養育費とは別に家賃を負担。

⇒決定した養育費 毎月15万9000円を22歳まで。

 次に赤森楓さんのケースでは離婚後、夫が会社名義で賃貸住宅を借り楓さんと子どもが住む予定。

楓さんは夫が養育費(毎月15万9000円)とは別に月10万円の家賃を支払ってくれるという好条件で離婚することができました。これは夫(42歳)が会社経営者で年収1500万円だから成せる業です。(家賃を会社の経費で落とそうという魂胆なのかもしれませんが)夫が二重(養育費+家賃)に援助してくれるので、それだけで日常生活は十分。離婚後、楓さんは自分の稼ぎ(年収300万円)を飲食や旅行、衣服など自分磨きに全額、使うことができるので誰にも邪魔されず、悠々自適な生活を送ることが約束されています。

 一方、40代前半(40歳~44歳)の男性の平均年収は457万円。「お前たちの家賃もこっちで持つよ」と大盤振る舞いするのは夢のまた夢。夫の稼ぎから捻出できるのはせいぜい最低限の養育費だけ。妻はせっかく稼いだ給料は日々の生活に消えていくので、女手一つで子どもを育てていくのに、飲みに行ってイライラを紛らわす、バーゲンセールに行ってウップンを晴らす、南国へバカンスに行ってジメジメから解放されるなど、心身ともに潤されることはなく、どんどん枯れていくのです。

>>(下)に続く

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