『週刊ダイヤモンド』12月22日号の第一特集は「超訳! 学問のすすめ」です。実は、約150年前に書かれた『学問のすすめ』には、現代の人にこそ読んでほしい教えが満載なのです。
現代人が知らない『学問のすすめ』
「不幸じゃないけど、割と不安」「常に“このままでいいのか”と漠然と思っている」。あるいは、もっと具体的に「自分は頑張っているつもりなんだけど……。なかなか結果が出ない」と悩んでいる。
働く人たちの中には、こんな人も多いのではないかと思います。
そんな人たちに、ぴったりの本があります。いや、さらに言えば、老若男女、全ての日本人にお薦めといえる本があります。
福沢諭吉の書いた『学問のすすめ』です。
電力の普及に努め、近代日本の発展を導いた「電力の鬼」と呼ばれる財界人で松永安左ヱ門という人がいます。松永は明治期に諭吉の教えを直接受けていますが、諭吉のことを聖徳太子、弘法大師に並ぶ日本三大偉人であると評しているほどです。
諭吉は晩年「途方もねえ」というような江戸弁を好んで使っていたそうですが、まさしく、諭吉自身が途方もねえ男でした。
では、「福沢諭吉の何がすごかったのか?」。あなたがそう問われたら、どう答えますか。
「慶應義塾大学の創始者」だとか、「1万円札の人」などと答えるのが精いっぱいで、出費があった際に「諭吉3枚分かあ」と、嘆くくらいかもしれません。
『学問のすすめ』をきちんと読んだことがある方は少数派なのではないでしょうか。本誌編集部の慶應義塾大学出身者に「読んだことがあるか」と聞くと、「へへへ」と笑ってお茶を濁されました。
実際、あまり知られていないからか、よく誤解されています。「誤解その一」は『学問のすすめ』は子供向けに書かれたというもの。「誤解その二」は「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずといへり」という序文の印象から、平等を説いた本だというもの。いずれも不正解です。
多くの人が諭吉の教えを知らないということは、本当にもったいないことです。実は、『学問のすすめ』は、およそ150年前に書かれたとは思えない、現代の人たちにこそ読んでほしい金言、アドバイスが満載なんです。
教育家であり思想家である諭吉が多くの著作を世に出した当時は、激動の時代。
その結果、340万部も売れ、これは当時の国民の10人に1人が読んだことになります。実際に明治維新を遂行したのが政府であるなら、諭吉はそのシナリオを書いたともいえます。(下の図版は特集内の漫画「福沢諭吉物語」の一部)。
しかし、すごいのはそこだけではありません。諭吉の主張の根底には「人間は独立して生きるべきだ。そのためには何が必要か」というメッセージがあるのです。諭吉自身も自分の力で何事も行い、人格の尊厳を保つべきだという「独立自尊」という言葉を好みました。
独立して生きるために、コミュニケーションスキルや統計学から論理的な考え方まで指南しました。しかも、それを易しい表現と独特の面白い例えで説いています。
つまり、150年たっても色あせないのは、人間が生きていく上で備えるべき根本的な姿勢を説いているからなのです。
ちなみに、先ほど紹介した有名な『学問のすすめ』の冒頭は、後に続く部分を含めてざっくりいうと「人間は平等である……といわれているが、勉強しないから格差が生まれる」となっています。
「今更勉強かあ」なんて思ってはいけません。人生100年時代といわれる今、いつ勉強を始めても遅くはないのです。
今こそ、学問のすすめ!

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