6月30日、公正取引委員会は家電量販店最大手のヤマダ電機に対して、独占禁止法に違反していたとして排除措置命令を出した。
家電量販店では、販売応援員としてメーカーが社員を派遣する商慣習があり、その社員は「ヘルパー」と呼ばれる。このヘルパー派遣要請を、ヤマダがメーカー側に強要したことが、独占禁止法で定める「不公正な取引方法」に抵触していたのだ。
背景には、ヤマダの圧倒的なバイイングパワーがある。連結売上高は1兆7678億円(2008年3月期)を誇り、2位に2倍以上の差をつけている。今期は2兆円を見据えており、購買規模の大きさを利用し、メーカー側との商談の際、「優越的地位の濫用」が行なわれていたと判断された。
「ヤマダの要求はのまざるをえない」と、日本を代表する大手メーカーでさえもヤマダに対してはものが言えない状況だった。行き過ぎた要求を突きつけられた大手メーカー幹部は「ヤマダはわれわれをビジネスのパートナーとして見ていない。彼らからすれば、われわれは単なる一仕入れ先でしかない」と憤る。
公正取引委員会の出す処分には罰則規定がなく、処分が即業績のマイナス要因となるケースはまれだ。流通業界では過去、ドン・キホーテやユニーなどに今回と似たケースで処分が出されたが、株価や業績の影響は小さかった。
だが、店舗改装作業や新規オープン店舗の開店準備など、あらゆる場面で力を借りてきたヘルパーを、今までと同じように使うことはできなくなるだろう。「今後、コストは確実に上がってくる」(ヤマダ関係者)との声もある。「できるだけヘルパーの力に頼らず、いかに現在の1人当たりの売上高を維持し、接客レベルを落とさずに店舗運営できるかが最大の鍵」(同)なのだ。
それができなければ、同社が急成長してきた最大の要因である「ローコスト経営」(販売管理費率で業界上場大手9社の平均が19.3%なのに対してヤマダは18.4%)が成り立たなくなるのだ。
今回、ヘルパー自体が問題視されたわけではない。要はその「要請方法」や「運用方法」に問題があったのだ。ヘルパーはメーカー社員であり、量販店の店員よりも高い専門知識を持つ。メーカーと量販店が同意の下、正しい方法でヘルパーが活用され、結果的に顧客に質の高いサービスを提供できることが本来あるべき姿だ。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 片田江康男)
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