あわや大事故。クルマの運転中にそんな経験があれば、思い出してほしいことがある。
それは運転開始から何時間後だったか。3時間を超えていたのではないか。

 警察庁科学警察研究所と共同で運転用シミュレーション機の改良研究に携わった関西福祉科学大学教授で東京大学特任教授の倉恒弘彦氏によると、「3 時間以上運転すると、ブレーキを踏む反応が明らかに遅くなっていた」という。

「事故防止のため、2時間運転したら10分休憩」とよくいわれるのは、脳が疲労を感じると、神経・内分泌(ホルモン)・免疫系の働きに変調を来すため。動作の反応が鈍くなり、視覚的な注意力も低下するのだ。

 長時間の運転や仕事で疲れたときの手軽な回復アイテムは、「緑の香り」である。昼休みに公園や森林のそばで深呼吸をしてみよう。あるいは緑茶を飲んでひと息つこう。脳の疲労回復を助けてくれる効能がある。食べ物ではトリの胸肉などに含まれる「イミダゾールジペプチド(アミノ酸結合体)」や、ビタミンB1・C、コエンザイムQ10などには疲労回復の効果があると証明されている。

 厄介なのは“慢性的な”疲労である。疲れやストレスがたまっているときに風邪にかかると、治っても全身がだるかったり、微熱や頭痛、筋肉痛に悩まされ続けたりする場合がある。
仕事ができないほどつらい状態が6カ月以上続いた場合は「慢性疲労症候群」と診断される。

 近年は病院に「慢性疲労外来」も登場した。大阪市立大学医学部附属病院・疲労クリニカルセンターは2005年に開設、これまでに約1万人が来院している。

「疲れは、痛みや発熱と同じように体の異常を知らせる警報。疲労度を自覚してほしい」と倉恒氏。自己診断表で内なる悲鳴に耳を傾けてほしい。


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