家族が脳死状態になり、「臓器移植」の判断を迫られたとしたら――。今年7月に施行された改正臓器移植法により、本人の意思表示がなくとも家族の承諾があれば、脳死患者から臓器提供が行えることになった。
調査によると、移植法改正を「知っている」と回答したのは全体の80.3%。「知らない」は19.7%と少数。男女別では男性が76.7%、女性が85.0%と女性の認知度が高かった。法改正への関心は高いことが推測される。
しかし、関心の高さが意思表示につながっているとは言えないようだ。アンケートで臓器提供の可否について意思表示を「している」と答えた人は 18.3%。「していない」人に、今後の意思表示についての意向を尋ねたところ、「したい」は37.8%、「したくない」が62.2%だった。
「している」「したい」人の理由は、「誰かの役に立ちたい(から、臓器提供をするという意思表示を行う)」など。また「自分の意思に反して臓器提供をされては困る(から、臓器提供をしないという意思表示を行う)」「臓器提供したくないから(同)」という逆の理由も。「家族が判断に迷うといけないから」という回答もあった。
一方、「したくない」人の理由は、「残された家族の気持ちに任せたいから」「まだどうしていいかわからない」などのほか、「脳死でも回復する可能性があるなら臓器は提供したくない。でもこの意思を表示すると世間から非難されそうなので、表示しない」という回答もあったという。
アンケートでは続いて、「もし家族が臓器提供の意思表示をしないまま脳死状態になった場合、同意すると思うか」を聞いた。結果は、「絶対にする」(3.5%)、「たぶんする」(40.6%)、「たぶんしない」(42.7%)、「絶対にしない」(13.2%)。不同意意向者が同意意向者を上回る結果となった。
また、意思表示を「している」人の同意意向者が68.4%だったのに対し、「していない」人では38.6%。意思表示をする人の中で不同意者は少数派だった。
データ比較が可能な2006年にさかのぼると、日本国内における脳死患者からの心臓移植数は10例(日本臓器移植ネットワーク『2006年の提供件数と移植件数』参照)。それに対して、アメリカでは2000例以上、フランス・英国でも数百例が行われている。韓国や台湾で行われている移植数も日本を上回っているというデータがある(臓器移植の情報サイト トランスプラント・コミュニケーション『臓器移植関連データ』参照)。
NPO法人日本移植者協議会は公式サイト内で、日本の移植数が少ない理由のひとつを「臓器移植に関する情報が正しく伝えられているとはいえない」こととしている。
国内移植数を伸ばすために行われた法改正。
(プレスラボ 小川たまか)