「昨日の自分の飲酒量を評価してみましょう」。免停中に受講した飲酒学級でこう言われたQさん(48歳)はヒヤリとした。
昨晩は飲み過ぎたので ──。

 Qさんではないが、昨晩の酒の量を評価してみよう。なんのことはない。飲んだ酒を純アルコール量に換算するだけだ。計算式は、アルコール飲料の量(ミリリットル)×アルコール濃度(度数÷100)×アルコール比重(0.8)だ。

 たとえば、ビールロング缶(500ミリリットル)なら、500×0.05×0.8=20グラムとなる。純アルコール10グラムを含む飲料は「1ドリンク」に換算するので、ロング缶1本は「2ドリンク」に相当する。アルコール度数15%の日本酒2合なら、360×0.15×0.8=43.2グラムで「4.3ドリンク」だ。昨晩はロング缶2本のあとで日本酒2合をちびちび舐めていたとすると、合計「8.3ドリンク」となる。

 厚生労働省の定義では、1日平均飲酒量が6ドリンクを超えていれば多量飲酒者に分類される。ただし、この定義にはこだわらなくてもいい。飲酒量や頻度にかかわらず、飲酒が絡む問題を抱えていればアルコール依存症の前段階にあると思われるからだ。
要は自分自身が「酒を減らす必要がある」と感じているか否かが鍵となる。

 もし減・禁酒を考えているなら、手始めに手帳の片隅にでも毎日のドリンク数を記載してみよう。そのうえで自分の飲酒量目標を決めるといい。客観的に数値化すると俄然、ドリンク数を意識するため、記録をつけるだけで減酒できるケースも多い。レコーディング・ダイエットならぬレコーディング減・禁酒というわけだ。アルコール依存症予備軍を対象にした専門施設の研究では、これにより多量飲酒日をほぼ半分に、ドリンク数を3割減らすことに成功している。

 アルコール消費量そのものは微減傾向にあるが、それでも成人人口の約1割が依存症予備軍といわれている。予備軍とアルコール依存症との境界線は、

(1)飲酒のコントロールができず連続飲酒がある
(2)アルコールを断つと手の震えなどの離脱症状が出る

 の2点。この2点がなければ、危うく踏みとどまっている段階にある。

 日本型ビジネスと酒は切り離しがたく、出世するほど飲酒問題を抱える率が高くなる。宴席も増え、ストレスを酒で紛らわすうちに一線を越えてしまうのだろう。心身をすり減らしてまで飲む価値があるかどうか。
今日、記事を読んだあなたはここらが減・禁酒時だ。

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