最近、慢性的な疲労と集中力の低下が著しいHさん、56歳。妻から「そろそろ更年期じゃないの」ときついひと言を言われてしまった──。


 慢性疲労や抑うつ気分、動悸や息切れなど中高年期になるとあちこちに不快な症状が現れてくる。最近はこうした不定愁訴をひとくくりにできる「男性更年期」という名称が市民権を得てきた。しかし、女性の「更年期」とは違い、男性の場合ホルモンの低下だけに原因を求めるのは難しい。自覚症状を訴える男性にホルモン補充療法を施しても一律に良好な結果が得られるわけではないからだ。

 そこで注目されているのが「首コリ」病。正式には頚性神経筋症候群と呼ばれるもので、要するに首の慢性疲労と持続的な筋収縮がさまざまな症状を引き起こすという考え方だ。発症のメカニズムについては研究途上だが、首には緊張型頭痛の原因でもある大後頭神経系や自律神経系が集中しているため、筋緊張による虚血や神経への圧迫が不定愁訴を引き起こすと推測されている。

 首コリ病が原因と考えられる症状の代表的なものは、首のコリや痛み、ふらつき、自律神経症状としての動悸や下痢、あるいは抑うつやイライラ、全身の疲労感なども含まれる。これらの症状に悩まされているにもかかわらず、詳細な検査を受けても明らかな原因が見つからない場合は、「どうせ老化だから」と諦める前に首コリ病を疑ってもよいだろう。

 そもそも首は重さ6~8キログラムにもなる重たい頭を支える組織。ただでさえ負担が大きいのに、姿勢の悪さが拍車をかける。特に前屈みでパソコンに向き合う姿勢は、普段の2~3倍の荷重がかかるほか、血流低下に伴う冷えや組織の酸素不足で筋肉が疲弊しやすい。
現代人のビジネス環境は決して首に優しいとはいえないようだ。

 首コリを防ぐには15分間に1回、頭の後ろに手を組んで支えながら30秒ほど首を後ろにそらし、首の緊張を緩めること。また、作業環境を見直してパソコンのモニターを目線と同じ高さに持ってくるとよい。このほか、首を冷やさない工夫やこまめなストレッチも効果的だ。

 一方、セルフケアでは太刀打ちできないほど首コリが慢性化している場合は、遠赤外線治療や低周波治療などによる理学療法とともに、首を酷使しないよう生活習慣の見直しが行われる。治療成績も良好だ。もっとも、本来は職場の環境が最大のネックかもしれないが。

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