NASHは血糖を下げるインスリンに対する感受性が鈍る「インスリン抵抗性」などが原因で起こるメタボリックシンドローム(メタボ)を背景とした肝疾患。
まず「酸化」を防ぐ食事。活性酸素による細胞障害に対抗するには、「ファイトケミカル(PC)」が強い味方だ。PCとは植物に含まれる機能性成分でポリフェノールやリコピンが有名。抗酸化作用のほか、発がん物質の抑制作用、免疫増強作用があるとされる。サプリメントもあるが、単一成分を過剰摂取するより野菜や果物を意識的に食べるほうがいい。ただし野菜は加熱すること。細胞膜にあるPCを吸収するには熱で細胞壁を壊す必要があるからだ。
次の「糖化」は現代人にとって鬼門の相手。糖質を含む炭水化物を制限する食事療法もあるが、ご飯好きには案外厳しい。その場合は食べる順番で血糖を上げ過ぎない工夫をしよう。
3番目の「鉄化」を防ぐのは鉄による酸化促進作用を抑えるため。すでにC型肝炎の患者には「鉄制限食」が処方されている。あまり神経質になる必要はないが、すでに肝炎や脂肪肝を指摘されているなら、レバーや赤身肉(魚の血合も)を避けたほうがいい。
食事療法というと面倒そうだが、これは今日の昼からできそうなことばかり。検診で肝機能に黄色信号が灯った方はぜひ実践してほしい。今のうちにいたわらないと後半生は肝臓のしっぺ返しを食らう。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)