梅雨も中盤に差し掛かり、いよいよ夏本番が近づいてきた。そこで気になるのが、熱中症対策、暑さ対策だ。

 今年も昨年に続いて電力不足に陥る可能性があるので、きちんと節電しながら、暑さ対策グッズを活用して、賢く夏を乗り切りたいところだ。

 冷却シート、コールドスプレー、冷却ベルト…。暑さ対策グッズはこの数年、商品バリエーションも増えて、急激に市場が拡大している。

 市場規模は125億円程度で、倍々ペースで増加しており、今年も大きな成長が見込まれている。

 小林製薬グループである桐灰化学の暑さ対策商品の売上高は、昨年度の5.1億円に対して、今年度は10億円を見込んでいる。「節電ニーズが高まっていることで、購入を早める人が増えている」(桐灰化学)という。

 首や腋、足の付け根などに張って体を冷やすのが、冷却シートだ。風邪を引いたときなどに熱をさます商品として登場したが、最近は夏の暑さ対策にも使われる。

 ライオン「冷えピタ」、小林製薬「熱さまシート」、白元「どこでもアイスノン」など、各社がしのぎを削っている商品だ。

 商品の機能は向上しており、「熱さまシート」は、長時間の冷却効果がウリだ。8時間後でも皮膚温度を2度下げ続けることができるという。

 コールドスプレーはその名のとおり、瞬間的に冷却効果を得られるもの。

体に吹き付けるタイプが主流だが、最近はいろいろな種類の商品が販売されている。

 桐灰化学が新発売した「熱中対策 でかけてクール」は、服を着たまま使えるもので、服の上からスプレーするだけで、ミスト状の冷却成分が蒸発して熱を奪い、涼しくなる。

 白元の「どこでもアイスノン 氷結ワイドスプレー」は、ハンカチなどにスプレーするとミストが氷結するので、ほてった部分に当てて冷却する。

 冷却ベルトは、首元などを冷やすのに使う。桐灰化学の「熱中対策 ぬらしてひんやり首もとバンド(写真)」は、水にぬらして、首、おでこに巻くだけで、熱を逃し続ける。

 水が気化するときの吸熱効果を活用した商品だ。繰り返して使用できる。他にも冷凍庫で冷やしておくタイプもある。女性にはデザイン性が高いスカーフタイプが人気だ。

スポーツウエアの熱中対策“新常識”

 真夏に外で運動をするときのウエアは、新しい素材や加工方法が導入されているので、チェックしておこう。

 ユニクロは、プロテニスプレーヤーの錦織圭選手、国枝慎吾選手のためにテニスウエアを開発した。

 暑さ対策に工夫を凝らしており、東レと共同開発した吸汗速乾素材「DRY-EX」を採用。

軽く薄い生地は通気性が高く、真夏でも肌をドライに保てるという。7月14日には両選手着用モデルの第2弾を発売する。

 機能性にこだわるアンダーアーマーが4月に発売したのは、太陽の光と熱を遮断するスポーツウエア「コールドブラック」(下写真)。

 機能性素材を開発するスイスのショーラー社の加工技術を採用した。炎天下でも素材の表面温度を4~6度下げ、体温上昇を抑制し、さらに紫外線による肌への負担も抑えるという。

 製品の色は、黒や紺などの濃い素材が多い。「ショーラー社の加工技術は、素材の色が濃いほど効果が出やすい」(アンダーアーマー)ためだという。

 黒のアウターは光を吸収しやすいという常識は、この素材では通用しないのだ。今期は2万点程度の出荷を見込んでいる。

 野外での運動で気をつけたいのは、夏でも長袖アンダーシャツ着用が有効ということ。

 肌にぴったりとしたインナーは汗をすばやく吸収し、蒸発することで体温を奪うので、結果として体温の上昇を抑えられる。

 女子プロゴルファーや野球選手が、長袖アンダーシャツを着ているのを見たことがあるだろう。

こうした新常識も知っておこう。

こまめな水分補給が重要

 熱中症対策では、水分補給も重要だ。実は、熱中症の裏には脱水状態が隠れている。

 特に高齢者は体力の低下などで、脱水症状になりやすく、こまめな水分補給が不可欠。家の中にいても脱水症状になることがある。

 体の変調を感じたら、「経口補水液」を補給しよう。水分だけでなく、汗とともに失った塩分などをすばやく補給できる。

 スポーツ飲料に比べて、経口補水液のほうが体液に近い成分で、脱水症状の治療として用いられている。

 経口補水液として市販されているのは、大塚製薬工場の「OS-1」(右写真)、和光堂の乳幼児用「アクアライトORS」など。病院のほか、調剤薬局で購入できる。

 大塚製薬工場は、「OS-1の売上高は、2011年に前年比で57%増加した」としており、今年も売上高を伸ばしそうだ。

 なお、自分で経口補水液を作ることもできる。

1000mlの水に、砂糖を大さじ4と1/2杯、塩を小さじ1/3杯を加えてよく混ぜる。このままでは飲みにくいので、レモン汁などを加えるといいだろう。

 熱中症により救急搬送された人数は、2010年が5万3843人、11年が3万9489人と、毎年数万人にものぼる。気温が高くなると熱中症は増えるので、暑さが本格化する今後は気が抜けない。

 予防の基本は、暑さ対策と水分補給だ。室内であれば28度を超えないようにすべきだ。

 外に出る際は、涼しい服装と、日よけ対策をしておくのがいいだろう。特に、高齢者や子どもは熱中症にかかりやすいのでより、気をつけよう。

 気象庁の3ヵ月予報によると、東日本が例年並みの暑さとなる確率が高いが、近畿地方より西の地域の6-8月については、平均気温が例年より高くなる確率が40%、例年並みの確率が40%、涼しくなる確率が20%で、暑くなる確率の方が高い。

 特に近畿地域は電力不足を受けて、節電に取り組まなければならず、最悪のケースでは停電する可能性もある。暑さ対策には万全を期しておきたいところで、市場はまだまだ拡大しそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 野口達也)

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