摘発強化で468件増える
2017年6月、神奈川県の東名高速道路で、ワゴン車があおり運転を受けて、無理やり停止させられた。後続のトラックに追突され、ワゴン車に乗っていた夫婦が死亡する大事故となった。
この事故をきっかけに、あおり運転は社会問題として広く認知されるようになる。警察も重大事故につながる危険行為として取り締まりの強化に動いた。
全国の警察が18年に道路交通法違反(前方を走る車との距離を詰め過ぎる「車間距離不保持」)で摘発した件数は、1万3025件。前年比1.8倍に増えた。19年はさらに増加し、1万5065件に上っている。
今回は、19年と18年の摘発件数を都道府県別に比較して、あおり運転増加ランキングを作成してみた。18年比で増加件数が多かった県を確認してみよう。
1位は静岡県で468件増。19年の摘発件数は1684件となった。このうち危険性がより高い、高速道路上での摘発は1641件だった。同県には、東名高速道路と新東名高速道路が走っており、高速での運転になりやすい場所が多数ある。
静岡県警は、摘発件数の増加について「あおり運転に起因する重大事故や事件が多発しているため、高速道路で取り締まりを強化した結果だ」(同県警交通指導課)と説明する。
4位の山口は摘発が前年比9.1倍!
2位は兵庫県で299件増。19年の摘発件数は2045件となった。このうち高速道路上での摘発は2038件だった。
件数が増えた理由について、兵庫県警交通指導課の担当者は、静岡県と事情は異なり「特に摘発を強化したわけではない」と話している。県内の道路で、あおり運転をする運転手が純粋に増えたとの見立てである。
なお、兵庫県は、高速道路と自動車専用道路の総距離が北海道に次いで、全国の都道府県で2番目に長い。
北海道と比べて走る車の数が多いことから、「高速道路交通警察隊のパトカーの台数が他の府県と比べて多い」(交通指導課)という。
兵庫県の19年の摘発件数は全国で一番多かったが、こうした事情もあって数字が膨らんだものとみられる。
3位は神奈川県で262件増。19年の摘発件数は866件となった。高速道路上での摘発は390件。
神奈川県といえば、17年6月の東名あおり事故で夫婦が亡くなった場所でもある。
4位は山口県で226件増。19年の摘発件数は254件で、前年から9.1倍に増えている。5位は群馬県で200件増。19年の摘発件数は867件だった。
19年に前年比で摘発件数が増えたのは、47都道府県中34。横ばいは鳥取と青森の2県である。減少したのは埼玉や広島など11都県だった。
(ダイヤモンド編集部編集委員 清水理裕)