紙パックを使用しないため吸引力の落ちないサイクロン掃除機や、羽根のない扇風機など独自の製品で存在感を発揮、過去最高の利益を更新し続ける英国の家電メーカー、ダイソン。その創業者で、チーフエンジニアを務めるジェームズ・ダイソン氏を直撃した。
──家電製品は成熟化が進んでおり、新たな付加価値をどこに見出すか、各社が苦戦している。消費者が求めているものを、ダイソンではどのようにして見極めているのか。
消費者が何を望んでいるかなど、わかるものではない。調べてわかるのなら、こんな楽なことはない。消費者が将来的に、まだ見ぬ何に興奮するか、それを消費者自身に質問しても意味がない。消費者に「あなたが必要とする商品を発明してみてください」というのと同じだ。もちろんうまくいかないときもあるが。
──では、何が商品開発の発想の原点になるのか。
大事なのはわれわれ自身が、普段の生活の中で「怒りを持つこと」。様々なうまくいかないことがらに対して、怒りを持つ。そして、それを解決するのが製品開発の原動力だ。
われわれが開発したデジタルモーターもフラストレーションによって生まれたものだ。
従来よりモーターの回転数は3.5倍増え、効率は87%向上した。カーボンダストも出ないクリーンなモーターだ。開発には100人のエンジニアが関わり、10年間で125億円ものカネもかかった。さらに、21億円かけた全自動の生産ラインで作っている。
この効率性により、電力使用量の少ない、小型軽量の製品が作れるようになった。
知的財産権の尊重が健全な競争を促す
──若いころから、ソニーの創業者の1人、盛田昭夫氏をリスペクトしてきたと公言している。
ソニーに対しては今も敬意を持っている。ソニーは、ウォークマンを世に出したとき、録音機能をあえてなくした。全体のビジョンに基づき、シンプルを追い求めた。いまの家電メーカーに、それと同じことをする勇気があるだろうか。
私は、商品を売ることを目的に、余計な機能をつけたことはないつもりだ。メーカー側が「うまくいく」と言い募る機能ではなく、本当に有用な機能でなければならない。たとえば(除菌・防臭や保湿などに効果があるとされる)イオン機能は、それ自体はいいアイディアかもしれないが、掃除機に付けても、空気の流れが速すぎてうまくいかない。同じくヘアドライヤーに付けてもうまくいかない。
──サイクロン掃除機や、羽根のない扇風機など、ダイソン製品のコピー製品が世界に出回っている。
コピー製品というのは消費者にとっての選択肢を狭めることにつながる。独占、寡占を予防することが競争を加速するという意味でコピー商品を認めるというのは間違った考えだ。英国では「少しくらい真似をすることはいいことだ」という判決を出した上級司法官がいたが、ひどい話だ。いわば「ちょっとくらい泥棒するのは悪くない」という意味で、モラル的に許されない。
コピーするのが難しくなったら、それぞれが独自の技術を見出さなければならず、それが消費者にとっての選択肢を増やすことになる。知的財産はもっと厳しく管理されるべき。
エンジニアの絶対数が足りない
──あなたはチーフエンジニアを名乗っているが、経営者という立場に興味はない?
ない。ダイソンを創業し、当初は私が経営してきたが、現在はCEOは別の者が務めている。今はチェアマンという存在はいないが、両方とも自分ではやるつもりはない。今はできるだけ長い間、エンジニアとして過ごしたい。ここがいちばん大切な場所だと感じている。
──ダイソンは非上場企業だが、今後も上場することもない?
その通り。あえて上場する理由がない。ダイソンの株式を持っているのは私1人なので、周りがわれわれをどう評価しているかということにメンタリティが影響されることがない。自分たちが正しいと思うことをやり、どんな製品を作り出せるかということに集中できるシンプルな日常を過ごせる。
──にもかかわらず、短い時間で収益は伸びている。
それはまさにプレッシャーがないからだ(笑)。上場すると、ビジネスをうまく進めるということばかりに注意が向き、プロダクトに対する意識が離れる懸念がある。ビジネスのためのビジネスになってはならない。
──4000人弱の社員のうち、1536人が「デザインエンジニア」という肩書きを持つ開発者だ。
ダイソンには、単なるデザイナーはいない。エンジニアはすべてデザインを学んでいる。われわれにとってデザインとは、目的のためにどんな技術を選び、どのような機能と品質を実現するかを追求した上で、最後に手に取ったときの結果として出てくるもので、技術とデザインは切り離すことはできない。
──とはいえ、デザインの素養のあるエンジニアを確保するのは決して容易ではないのでは?
日本でも同じだと思うが、英国ではエンジニアの数、科学者の数が絶対的に足りない。中国、韓国の電機メーカーが台頭し、タイやマレーシア、南アメリカの諸国も伸びているという世界的な競争社会の中で、これは大きな問題だ。
今、中国やインド、シンガポールの大学の卒業生の40%はエンジニアだ。
そこで、私の運営する財団(ジェームズ・ダイソン財団)では、デザインエンジニアを目指す大学生、大学院生に資金を出して育成したり、大学に残っている研究者たちが、よりよい研究を続けられるような支援活動をしている。同時に政府に働きかけ、国から補助金を出してくれるよう求めたりしている。とにかく若い人たちに、この分野に興味を持ってもらいたい。

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