[橘玲の世界投資見聞録] 台湾・金門島と中国・厦門、それぞれのアイデンティティ

       

『金門島流離譚』では、殺人事件をきっかけに、「ニセモノの島」に次々と「ニセモノ」たちがやってくる。だがひなびた街をいくら歩いても一片の禍々しさも感じられず、名物の蚵仔麵線(牡蠣入りソーメン)を食べてアモイに戻ることにした。

はるかに台湾らしい中国・厦門

 金門島が観光地としていまひとつ飛躍できないのは、アモイが金門島よりもはるかに「台湾」化してしまったからだ。

 アモイAmoyというのは廈門(シアメンXia Men)の閩南語読みで、中国人貿易商の父と日本人の母を持つ鄭成功が、明末・清初にアモイと台湾を清への抵抗運動の拠点にしたことで知られている。このことからわかるように、もともとアモイと台湾は同じ文化圏というか、同じ地域の本土と島の関係にある。

 アモイの繁華街は中山路だが、ここには「風台(台湾風)」の看板を掲げた土産物店がずらりと並んでいて、海産物を中心に台湾や金門島の特産品はすべて買える。その近くには「台湾夜市」という屋台街があり、台北の道教寺院・龍山寺の夜市にも劣らぬ賑わいだ。海外旅行には縁のない中国本土のひとびとにとって、アモイはいまでは「パスポートなしで行ける台湾」になった。

 アモイの最大の観光地はコロンス島で、街の中心にあるフェリー乗り場から片道8元(約100円)、所要時間10分ほどの距離だ。

 コロンス島は、アヘン戦争後に結ばれた南京条約で、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、日本など列強の共同租界が置かれ、各国の領事館や学校、教会などがつくられた。赤レンガ造りの洋館が立ち並ぶ一角は、まるでヨーロッパの街に迷い込んだかのようだ。世界遺産に登録されたことで中国全土から観光客がやって来るようになったが、路地に入ればいまでも往時の雰囲気を感じることができる。

 コロンス島は、いまでは台湾からの観光ツアーの最大の目玉でもある。島を見渡す日光岩やホワイトハウスを模したアモイ博物館は、中国と台湾の観光客でいっぱいだ。

 中国と台湾は2つの異なる「国」だが、福建のひとたちは、北京や上海、広東の人々とは普通話でなければ会話ができず、台湾のひとたちとは母語である閩南語で話している。だとしたら、彼らのアイデンティティはどこにあるのだろう。

 アモイの台湾夜市で台湾B級グルメの鶏肉飯を食べながら、そんなことを思った。

当時の記事を読む

ダイヤモンド・オンラインの記事をもっと見る

トピックス

今日の主要ニュース 国内の主要ニュース 海外の主要ニュース 芸能の主要ニュース スポーツの主要ニュース トレンドの主要ニュース おもしろの主要ニュース コラムの主要ニュース 特集・インタビューの主要ニュース

もっと読む

国内ニュース

国内ランキングをもっと見る

コメントランキング

コメントランキングをもっと見る
2013年2月11日の経済記事

キーワード一覧

このカテゴリーについて

経済、株式、仕事、自動車、金融、消費などビジネスでも役に立つ最新経済情報をお届け中。

通知(Web Push)について

Web Pushは、エキサイトニュースを開いていない状態でも、事件事故などの速報ニュースや読まれている芸能トピックなど、関心の高い話題をお届けする機能です。 登録方法や通知を解除する方法はこちら。