人的資本経営への注目が高まるなか、社員が経営に対して建設的に提言できる企業が支持を集めている。オープンワークはクチコミ分析を通じて、社員が自社の未来に意見を述べる「経営提言スコア」を算出しランキングした。
経営者にモノ申せる会社が
いま注目される理由
上場企業を対象とした人的資本情報の開示義務化から2年が経過した。人的資本を単に「開示」する段階から、経営戦略とひも付けて説明や改善に踏み込む企業が増えている。
人的資本経営への注目が高まる現在、どのような経営が支持され、対話の素地を持っているのかを見極めることは、経営改善やステークホルダーへの説明責任を果たす上でも、有効な手がかりとなる。
社員・元社員によるクチコミサイト「OpenWork」を運営するオープンワークは、OpenWorkの「経営者への提言」クチコミに着目。人事制度や組織文化に対する具体的な改善提案や経営方針への建設的な意見を含む投稿の出現率を算出し、「経営提言スコア」として指標化、ランキングした。
経営提言スコアとは、経営者への賞賛や肯定的な評価の量を示すものではなく、あくまで会社の未来に対して建設的な提言を行った社員の多さに着目したスコアである。
社員・元社員の声は、単なる賞賛や不満とは異なり、「会社がより良くなり発展すること」を願う視点に立っており、企業の未来に対する社員の期待値を読み解く上で貴重なヒントとなる。建設的な提言が多く投稿されている企業について、その特徴やメッセージを分析していく。

・社員クチコミ「経営者への提言」
「この企業の経営者へ、この企業をより発展させるための提言をするならば、どのような事を伝えますか?」と問いかけ、自社の経営陣に対して建設的な意見を収集するクチコミ項目
・経営提言ランキング
OpenWork上の「経営者への提言」欄に投稿されたクチコミを分析し、自社のさらなる発展や変革を見据えた提言の出現割合を「経営提言スコア」としてOpenWork独自に数値化。22年以降に投稿された、正社員による「経営者への提言」欄への回答が10件以上かつ集計時点で総合評価が3.5点以上の上場企業を対象に集計しランキング
ランキングトップは三井物産
「経営者への提言」の特徴は?
本ランキングのトップ3は、三井物産、フリー、出光興産だった。これらの企業に寄せられた投稿を確認すると、経営陣に対する厳しい意見も存在するが、それだけにとどまらず、改善に向けた具体的な提案や改革への期待が添えられている点が特徴的である。単なる批判ではなく、自社をより良くしたいという思いに基づいた建設的な声が多く見受けられる。
では、実際のクチコミを見てみよう。
「人材が非常に重要な会社であるため、評価制度や優秀な人間を早く権限のあるポジションに置くことは重要だと考える。現在変革中の人事制度の中でそういった改革が今後施されることを希望する」(営業、三井物産)
「目標達成してから社員への還元や、今後組織はどのように変わるかに関しても、ちゃんと従業員とコミュニケーションをとっていければ、よりモチベーションが上がります」(ビジネス職、フリー)
「事業は人を育成する手段として人材の育成こそが事業そのものであるという考え方のもと社員の士気は高いと思う。国内の事業が縮小均衡ななかでいかにして新たな事業を創出していくかがポイントだと思う」(事務職、出光興産)
社員が主体的に経営や組織に対して意見を投稿する背景には、企業への愛着や帰属意識、さらには感謝の念があると推察される。
人的資本経営の重要性が増す現在、社員の声に真摯に耳を傾け、その意見を納得性のある人事制度や戦略に反映させていくことが、企業の競争力を高め、ステークホルダーからの信頼を獲得するうえでも重要であると言える。