日本透析医学会の調査によると、日本国内の透析患者は2021年をピークに減少傾向にある。糖尿病性腎症や慢性糸球体腎炎など、透析導入に至る原因疾患への治療方法が進化し、新たに透析療法を受ける患者数が減っていることが背景のようだ。



 一方、死亡数は透析患者の高齢化もあり、じわじわ増えている。透析患者の三大死因は感染症、心不全、がんだが、心不全と脳卒中、心筋梗塞をまとめて「心血管疾患(CVD)」とカウントすると、CVDが死亡原因の第1位だ。発症リスクは非透析者のおよそ20倍にも及ぶ。



 透析患者のCVDを防ぐ試みとして、透析の頻度や時間の調整、血圧管理の徹底などが行われているが、もっと有効な手がないか模索されている。



 カナダとオーストラリアで行われた試験では、CVDの発症予防に良いとされているEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)の有効性が検討された。



 対象は血液透析(HD)中の成人患者1228人(平均年齢64.3歳、男性6割)で、HD歴は平均3.7年、35%がすでにCVD歴があり、85%が高血圧、55%が糖尿病を合併していた。また、半数以上がすでに心臓を守る薬(脂質異常症治療薬や降圧薬)を飲んでいた。



 対象者を1日にEPA1.6g+DHA0.8g入りの魚油サプリを飲む群とプラセボ群(コーン油)に割り付け、最長3.5年間追跡した結果、EPA/DHA群ではCVDが原因の死亡を含む、重度のCVD(心筋梗塞や脳卒中および手足の切断を伴う閉塞性動脈硬化症など)の発症率は試験開始直後から低下。最終的にプラセボ群に比べ、およそ40%も有意に低下することが示された。



 中等症~軽症のCVDでも同様で、研究者は「普段はHDで除去される血中のEPA/DHA濃度がサプリを毎日補給することで改善し、心血管を保護した可能性」を指摘している。



 ただし、副作用として重篤な出血や感染症の増加も認められているため、服用には注意が必要。特に、すでに血液サラサラ薬を飲んでいる場合は、高用量の魚油サプリで出血傾向が助長される可能性がありそうだ。



 透析療法中にサプリを試したいときは、必ず主治医に相談しよう。



(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)

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