抗肥満薬は本来、過体重や肥満症の成人に処方される“体重管理薬”だ。しかし、美容やダイエット目的の自由診療が横行し、問題視されている。
今年1月にBMJ(英国医師会誌)に報告された調査では、抗肥満薬の「適格」処方対象者である過体重、または肥満症の成人(18歳以上)を対象とした複数の臨床試験や質の高い観察研究などから、抗肥満薬中止後の体重増加、いわゆるリバウンドに関連するデータがまとめられている。
これまでに承認されている抗肥満薬――セマグルチド、チルゼパチド、リラグルチドなどを8週間以上使用し、かつ中止後4週間以上の追跡調査が行われていることを条件にデータを集め、37研究、9341例が解析対象となった。平均治療期間は39週間、中止後の平均追跡期間は32週間だった。
抗肥満薬中止後の体重変動をみると、月平均0.4kgで体重が増加。中止後1.7年で抗肥満薬開始時の体重に戻ると推測された。また、治療中に改善された血圧値や空腹時血糖値、血清コレステロール値も、抗肥満薬中止後はジワジワ悪化し、こちらも中止後1.4年で元に戻ると推測された。
ちなみに、美容目的で頻用されている最新の抗肥満薬では、中止後の体重増加が月平均0.8kgと戻りが早く、中止後1.5年以内に元の体重に戻ると推測されている。「食欲中枢」に働きかけて「空腹感を減らし、満腹感を増幅させる」というメカニズムの薬なのだから、戻りが早いのは当然だろう。
研究者は抗肥満薬の安易な処方に警鐘を鳴らすとともに、「抗肥満薬は生活習慣の是正などの行動療法と併用すべきだ」としている。
一方、美容目的でのリバウンドについてはいまだにやぶの中だ。一つ言えるのは、一度強制的に食欲を抑える薬の旨味を知ってしまうと、たとえリバウンドのリスクがあっても健康的に痩せる努力は難しくなること。
美容目的で抗肥満薬を使うつもりであればリスクを負う覚悟と、薬が効いているうちに健康的な食と運動の好循環をつくる意志が必要だろう。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)

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