フィリピン在住17年。元・フィリピン退職庁(PRA)ジャパンデスクで、現在は「退職者のためのなんでも相談所」を運営する志賀さん。

その志賀さんが長年の経験から見いだした、フィリピーノとうまくやっていくコツを教えてくれました。

 フィリピンに住んでいたらやっぱりフィリピン人に好かれたい。皆に好かれて愛されれば、何かあっても守ってくれて安心だ。病気になったり、経済的に困っても皆が助けてくれるだろう。

 日本では気にもしないことが、いやがられたり嫌われたりする。逆にどうでもよいと思っていることが、やけに感謝されたりする。「悪いことをしたら叱られるのは当たり前」「借りたものは返せ」「ウソは泥棒の始まり」などなど、道徳教育でとことん仕込まれた日本での倫理・常識は日本に置いてきて、この際フィリピーノ流をしっかり身に着けよう。

1.マバゴとマバホ(香りと臭い)

 フィリピーノは臭いに敏感だ。体臭と口臭をことのほか嫌う。だから、出がけには必ずシャワーを浴びて準備万端整える。フィリピンで体臭や口臭を感じさせる人はまずお目にかからない。欧米やアラブ、あるいはインド人などと比べたらはるかに清潔なはずの日本人でもかなりの確率で臭う人はいる。



 老臭にはクエン酸を多く含む食べ物、梅干などが効果があるそうだ。またパセリを常食する人に口臭はないという。ちなみにタバコや酒で臭い人は多いが、なぜかフィリピン人はこれさえもない。

 フィリピーノが鼻の下を人差し指でこすったら「臭い」という意思表示で、最大の侮辱の表現だから、さっさとその場から離れ去ったほうがよい。モテるコツ、その一は「いつも清潔に、臭いは大敵」だ。

2.マバエット(優しい)

「理想の男性像は?」と聞くと、まず最初に出てくるのが「優しい人」だ。いつでも笑顔、怒っていても笑顔、遅れてきても笑顔、文句を言うときも笑顔、とにかく笑顔を絶やしてはいけない。

 仕事で部下にややこしいことを質問するとどうしても難しい顔になってしまうが、相手はそれを「怒っている」と受け止めて、構えてしまう。あるいは怖くなって、言い訳から始まってまともな答が返ってこない。そんな場面でも笑顔を交えて話せば、相手もリラックスして協力的になる。

 笑顔以外の表情はこの国ではいらないくらいだ。モテるコツ、その二は「いつも笑顔で優しく」だ。

 

3.人前で怒らない、叱らない、文句を言わない

 フィリピンでは、仮に相手がミスをしたとしても、他人がそばにいる場合は決して怒ってはいけない。優しく注意するだけで十分。

 どうしても言っておきたいことがあったら、二人きりになったときに話す。それも、なぜいけないかじっくりわかりやすく説明して、できれば話の初めと終わりに相手をほめる言葉を付け加えるくらいの心構えが必要だ。

 人前で文句を言ったり叱ったりしても、相手は周囲の目を気にして、屈辱感でいっぱいで、こちらの言うことなど聞いていない。いかにこの場を逃れるか、あるいはどうやって復讐するかしか考えていない。

 日本では妻や子どもを人前で叱責するのは普通だが、フィリピンでそれをやったら一巻の終わりだ。恋人なら、もう二度と会うこともないだろう。モテるコツ、その三は「人前で怒らない、叱らない」だ。

4.ケチ(コリポット)らない

 フィリピーノにとってケチは罪だ。あればあるなり、なければないなりに気前がよくなくてはいけない。自分だけよければまわりはどうでもよい、というような自分勝手は許されない。



 自分がなにか食べている最中に知り合いが通りかかったら、「食べませんか(カイン・カ・ナ)」と勧める。喜びはみなと分かち合うのがキリストの教え。

 あればあるだけ使い果たして分け与え、宵越しの金は持たない。明日は明日の風が吹く。これがフィリピン流だ。

 彼女や妻の友だち、家族や親戚がやってきたら、大いにふるまってやろう。彼らはどういうわけかいつも腹が減っているので、「ケチらずに、いつも食わせてやる」のが、モテるコツ、その四だ。

5.パサルボン(お土産)

 じゃぱゆきさんがフィリピンに戻るときは、ダンボールに大量の物資を詰め込んで帰る。それはすべて家族や親戚、友だちへのお土産(パサルボン)だ。

 お土産を買うことができなかったら、フィリピーノは故郷へは帰らない。海外に渡航したり、旅行に行ったり、あるいは里帰りにお土産は必須で、それがないと家族や親戚にそっぽを向かれる。お土産の山を前に至福のひと時を家族で味わうのだ。



 だから、機会があるごとに「お土産を渡す」のが、モテるコツ、その五だ。

 日本では釣った魚にエサをやらないと言うが、フィリピンでは、そうはいかない。釣った魚にもエサをやらないと、すぐに逃げ出してしまう。バレンタイン、誕生日、結婚(恋愛)記念日、クリスマスの年4回は真っ赤なバラの花束をプレゼントすることは必須だ。そして毎日「I love you」を10回は囁くのが愛する人への礼儀というものだ。

 これが、1から5までのモテるコツの凝縮なのだ。

 フィリピーノはけっして遊びでセックスはしない。いつも真剣勝負だ。セックスは男と女(恋人あるいは夫婦)、家族そして社会を築く根幹だから気合が入っている。だから、「すぐに子どもがほしい」などと言い出す。

「相手が同意したから愛もないのにセックスした」「ただそれだけ」なんて理屈は通らない。言葉巧みに誘って、愛がないのにセックスしたとしたら、それは強姦と同じだ。
愛のないセックスなら金で買えばよい。タダでやったと喜んでいたら、あとで手痛いしっぺ返しを食らって、タダより高いものはないと痛感するだろう。


(文・撮影/志賀和民

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