日本語教師としてインドネシアと出会い、2005年からグローバル人材紹介会社JACリクルートメントで日系企業・日本人求職者のサポートを担当。ジャカルタ在住8年の長野記者が、活気・熱気あふれるメトロポリタン・ジャカルタの今をお伝えします!

 人と仕事をマッチングするのが私の仕事なのですが、インドネシアには本当にさまざまな隙間産業的(?)な仕事があり、人ってたくましいな、と感じることが多いので、今回はインドネシアならではのユニークな仕事をご紹介します。

渋滞から一刻も早く抜けだしたい……そんなときは

Polisi Cepek(ポリシ・チュペ):Uターンで料金を調達する仕事

 ジャカルタは交差点で右折ができない道路が多く、右へ行きたいときは交差点をまっすぐ通り過ぎUターンして左折するか、いったん左に曲がってUターンしてまっすぐ進むかの方法を取らなくてはいけません。

 ただでさえ車の数が多くすごい渋滞なのに、この交通ルールのせいでさらに渋滞は悪化。Uターンできる場所は長蛇の列です。直進する車が多いのでなかなかUターンもできず、さらにさらに渋滞は悪化、列は短くならないのです。

 ここで登場するのがUターンをさせてくれる人で、Polisi Cepekといいます。左から直進してくる車を制止してくれ、Uターンを促がしてくれます。その際、ドライバーはお礼に、その人にお金を支払います。

 1回のUターンで300~500ルピア(約3~4円)ぐらいです。Uターンする車が多いところでは1日数百台いうこともありますので、
理論月収 400ルピア×500台×30日=600万ルピア(約5万円)

 インドネシアの最低賃金(月収)は月給2万5000円ぐらいですので、はるかにそれよりも多い月給ということになります。Uターン以外でも脇道から大通りにでるときに、直進の車を制止してくれるPolisi Cepekもあります。

3人同乗していないと入れないエリアに1人で入りたい……そんなときは

Joki(ジョッキー):3 in 1エリアで車に同乗する仕事

 ジャカルタの中心部の目抜き通りは午前7時~午前10時、午後4時半~午後7時の間、1台の車に3人以上乗っていないと通ってはいけないという交通規制があります(警察に見つかると罰金のようです。タクシーやバスは規制対象外。

日祝は規制なし)。

 3人に満たず、規制のある道を通らないと出社できない場合はどうするのか? ここで登場するのがジョッキーという仕事をしている人たちです。

 ジョッキーは3 in 1規制のある道に入る手前の道端で人差し指を上げて待っています。3人に満たない車のドライバーはそこで人を1人もしくは二人乗せて、規制のある道に突入します。目的地に到着後、ジョッキーにお金を支払い、降りてもらいます。ヒッチハイクのようなイメージでしょうか。

 ジョッキーは子どもから大人までいろいろな人がいますが、タクシーのドライバーさんの話では、男性は危険なのであまり乗せない、女性か子どもを選んで乗せるということでした。

 ときどき赤ちゃんを抱っこしたお母さんジョッキーがいるのですが、その人を乗せると料金は1.5人分でいいのでそのほうがお得だとも。赤ちゃんは必ずしも自分の赤ちゃんではなく、レンタルしている人もいるそうです(赤ちゃんをレンタルするというビジネスがここでまた生まれているわけですね……)。赤ちゃんが泣かないように風邪薬などを飲ませ眠らせている人もいるらしく、最近問題になっています。

 気になるジョッキーの料金は走行距離によりますが2万~3万ルピア(約200~300円)程度。ジョッキーたちは降ろされた場所からまたもとの場所に戻りますので、その交通費を含めての料金になります。

 仕事としては時間が限られていることと、どこに連れて行かれるかわからないことから、1日せいぜい午前と午後にそれぞれ2回(1日4回)、仕事ができればよいかというところ。
理論月収 2万5000ルピア×4回同乗×25日=250万ルピア(約2万1000円)

 生活費として十分ではないのですが、お小遣いとしては十分な給料となります。ただし、ジョッキー自身も身の危険を感じることはあるでしょうし、ジョッキーを乗せるほうも同じように危険を感じることがあります。犯罪がないとは言い切れないので、みなさんジョッキーを雇う際はご注意を。

突然の豪雨……こんなときは

Ojek Payung(オジェック・パユン):雨が降り出すと傘をレンタルしてくれる仕事

 ジャカルタの季節は雨季と乾季なのですが、乾季でもときどくバケツをひっくり返したような大雨が降ることがあります。インドネシアの人は基本的に傘をさす習慣がなく、雨が降ってきたら雨宿りしておさまるのを待つというのが普通です。

 とくにジャカルタは車生活で建物から建物を車で移動するので雨にぬれることが少なく、私もインドネシアに来てから傘を持ち歩くことがまったくなくなりました。折り畳み傘さえも持ち歩きません……。

 でもちょっとした距離で傘が必要なことがあり(道を渡る、建物を出てから駐車場までなど)、どうしようかなーと思っていると、傘を持った少年たちがわらわらと寄ってきます。この子たちがOjek Payungと呼ばれる傘をレンタルする仕事をしている人です。

 なぜか大人や女性・女の子は少なく、ほとんどが男の子(5~13歳ぐらい?)です。理由はよくわからないのですが、子どものお小遣い稼ぎというところなのでしょうか。

「傘をレンタル」といっても、傘を貸すだけでなく、荷物を持っていたりするとOjek Payungたちが傘をさしてくれ、一緒に歩いてくれます。これがなかなか便利。

 さて、Ojek Payungの料金ですが1回5000~1万ルピア(約42~83円)。理論月収は……、雨の日が何日あるかによるので計算できません。雨季は繁忙期ですね。みなさんも突然雨が降ってきたときは、ビルの表に出てみてください。どこからともなく現れるOjek Payungたちに必ず出会えます。

違法?合法? とにかくある、いろんな仕事

【勝手に車のガラス窓を拭く仕事】

 車に乗っていて赤信号で停止すると、どこからともなくいろんな人が現れます。物売りについては後ほど紹介しますので、まずはガラス窓を拭く人について。

 お願いもしていないのにフロントガラスとドライバー横の窓、サイドミラーをハタキで掃除始めます。お願いをしていないので、仕事というのかわかりませんが、心理上なにも払わないというわけにもいかず、支払いをする(させられる)というわけです。

 1回叩いてもらって500~2000ルピア(約4~17円)。

ジャカルタの町はひどい渋滞とホコリなので、ハタキで叩いたところでキレイにはなりません。というわけで、ちょっとありがた迷惑お仕事ですね。

【なんでもドライブスルー?の仕事】

 赤信号で停止すると本当にいろんな物売りがやってきます。

新聞・雑誌(新聞は午前中が多い)
たばこ
飲み物(冷えた水・ジュースなど)
食べ物(揚げ豆腐、ピーナッツ、カットフルーツ、せんべいなど)
おもちゃ(水鉄砲、起き上がりこぼし、人形など)
地図・カレンダー・芸能人ポスター
手工芸品(木彫りの人形など)
ティッシュ
車用掃除道具
 などなど。

 ときどき浮き輪やビニールプールなどを売りに来ることも……。だれが買うんだろうか。

 独立記念日の前になるとインドネシアの国旗を売りに来る人が多くなったりします。ジャカルタはとにかくひどい渋滞で、またコンビニもまだ少ないので、ちょっと買い物に立ち寄るというのがなかなかできません。なので、このドライブスルーの物売りがとっても発達しているのだと思います。

 ものすごく暑い日に喉が渇いていたのですが、近くにお店もなく、あったとしても道の反対側……。困ったと思っていたら冷たいミネラルウォーターを売りに! 買ってみたのですが、これがまたびっくり。あまり高くありません。

スーパーの価格と比べると2~3倍ぐらいなのですが、レストランほどは高くない。

 ミネラルウォーター600mlがスーパーで1500ルピアとすると、大よそ3000ルピアほど。暑い中売り歩いているのでもう少し高くてもいいのではないかと思うのですが、意外と良心的なことに驚きます。暑ければ暑いほど、渋滞すればするほど売上げは上がる、という商売です。ただしライバルも多いです。
理論月収(ミネラルウォーターを上記の値段で販売した場合)
1500ルピア×50本×30日=225万ルピア(約1万8750円)

 インドネシアに来たことがある人であれば、「あ、いたいた――」と思うであろう、代表的なものをご紹介しました。

 これ以外にも公共の電車やバスに乗っていると、いろんな商売をしている人がいて、本当にインドネシア人のクリエイティブさに驚きます。

 私がインドネシア・ジャカルタに来てこのように働く人たちをみて思ったことは、「人は本当にたくましい」ということ。どんな状況でも人は食べていくためにお金をかせぐ方法を生み出したくましく生きていける。仕事を失うことや収入が減ることへの不安を持っている人が多いなか、インドネシア人のこのたくましさに勇気づけられ、自分の置かれている環境に感謝し、与えられている仕事を一生懸命頑張らなければと感じます。

 インドネシアはGDP(国民総生産)が延びていると注目されていますが、実はGNH(Gross National Happiness、国民総幸福量)も高い国だと思います。これが、私がインドネシア人を好きな理由の一つでもあります。

 急激な高度成長で格差社会であることは間違いないのですが、それぞれ自分の置かれている生活環境や生活レベルに「十分だ」「幸せだ」と感じている人が日本より多いように思います。私たち日本人から見て貧しくつらい生活だと思っても、毎日笑顔で楽しそうにしている人はたくさんいます。

 ガツガツとした欲がない=現状満足・向上心がないと思われてしまうことも多いですし、一緒に仕事をしていると「もうちょっと頑張ってほしい」と思うことももちろんあるのですが、どこかでこのままでいてほしいなとも思ったりするのです。

(文・撮影/長野綾子)

編集部おすすめ