昔の国鉄といえば、駅長が早朝に来て掃除をし、社員は重役出勤で何もしないというのが常だったとされる。JR北はJR各社の中で唯一、旧態依然の組合色の解消に失敗したというのが見立てだ。
だが、一連のJR北の問題でよく指摘されるのは、1987年の分割民営化によるJR北の構造的な経営基盤の脆弱さだ。2012年度の営業赤字は309億円と突出、安全面への設備投資が行えないというロジックである。気象条件が厳しい北海道では致命的だ。
これまでJR北は、分割民営化時に赤字を埋める目的で国が渡した「経営安定基金」の運用益で赤字を補填してきた。このため合理化のしわ寄せが人材に及び、特に中核を担う40代の技術担当者が極端に不足しているという。
四国や九州は問題なしだが、これらJR北特有のハンディキャップに、原因のすべてが帰せられるのか。
JR北を除く、JR6社が9月末に緊急点検を行ったが、結果は全社とも「補修箇所なし」。JR四国やJR九州といういわゆる「3島会社」を含めてだ。
自民党北海道連の伊東良孝会長が、財務問題と並列して挙げたのが、JR北の「決まりを守らない点やモラルの問題」だ。鉄道関係者の中には、より率直にJR北の不祥事の陰に労組問題があることを指摘する声は多い。
一方、JR北の労組幹部は「そんなことはあり得ない」と声を荒らげる。会社側も「労組問題を原因として勝手にうわさしているのは、マスコミでは?」とここでは妙に足並みをそろえる。
もちろん組合の真意は別にある。「闘争の際のサボタージュはあり得ても、日常業務で仕事をしないなんてあり得ない。分割民営化以降、経営陣は利益のみを追求し、現場が保守点検の必要性を訴えても、中間管理職で握りつぶされているのが実情だ」(労組幹部)と、中間管理職の“サボタージュ説”を唱えるほどだ。
振り返れば2年前、企業風土にメスを入れようとした矢先に自殺した中島尚俊元社長の遺書には「お客さまの尊い命をお預かりしているという事実を認識し、(中略)安全を最優先にするということを常に考える社員になっていただきたい」と記されていたが、今日の混乱を予見していたといえる。
「外部から社長を送り込んでも同じ。結局は、JR北内部の問題」と多くの鉄道関係者は言う。鉄道業界では、「そもそも、経営基盤の弱い3島会社をつくったスキームに無理がある。JR東日本が救済し、統合できるよう国が抜本的な解決策を作る道しか残されていない」という声も上がる。
“ゆがんだレール”を生み出した原因は国にもある以上、もはや頬かむりは許されない。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 JR北海道問題取材班)

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