日本でもブームになったタイ式マッサージ。タイ旅行の目的のひとつにもなっている。

バンコク 発ビジネス・生活情報誌『DACO』編集部が、バンコクのマッサージ経営の現状を調査。費用は? 人集めは? リタイア後はタイでマッサージ店でも……そんな夢を見ているひとは必読です。

タイ人経営の街角マッサージ店は、サバーイなビジネスなのか!?

 足ツボの絵が貼ってあるガラス戸を開けると、そこはお気軽マッサージ店。外国人の往来がある通りはもちろん、ローカルな通り沿いでもよく見かける。店の入口でマッサージ師たちが群れて、けだるそうにパパイヤサラダを食べている光景を目にすると「そんなニンニク臭いもの食べていいの?」と心配になる。

 はたして街角マッサージ経営はサバーイ(快適、おいしいなどの意味)なビジネスなのか? まずは開業シミュレーションをご覧いただきたい。

編集部予想では、開店に必要な金額は最低で約60万円!

 通り沿いにあるマッサージ店を覗いて「これぐらいなら手持ちの資金でもできそうだな」と予測したのは、40平方メートルほどのスペースに5脚ほどのマッサージチェアが置かれている店舗。近くのとある食堂の1カ月の家賃を聞いたら半分くらいのスペースで1万5000バーツ(約4万5000円)との答え。そこで、このマッサージ店の家賃をその倍の月3万バーツ(約9万円)、デポジット9万バーツ(約18万円)としよう。

 開業に先立った内装費は、コンドミニアムで修繕に使う金額を参考にし、3万バーツ(約9万円)とみる。道具はマッサージチェア1脚とタオル、石鹸、メニュー表などをセットで購入すると考えて5000バーツ(約1万5000円)。5脚分で2万5000バーツ(約7万5000円)。

スタッフの人件費は月給1万バーツ(約3万円)で、5人で5万バーツ(約15万円)。1カ月のエアコン含む光熱費1万バーツ(約3万)。締めて、最低開業資金20万5000バーツ(約61万5000円)。こんなもので立ち上がるのでは?

 大手マッサージ店とは違い気軽に客も入り、1日12時間営業で1時間200バーツ(約600円)のマッサージを40人(マッサージ師1人で8人施術)に施したとして、1カ月24万バーツ(約72万円)。前述の経費に加えて、月々かかる消耗品や電話代、修繕費などを5000バーツ(約1万5000円)と考えると、経費総額は9万5000バーツ(約28万5000円)で粗利は14万5000円(約43万5000円)にもなる。年に1回徴収される30%の税金などを考えても、オーナーは楽々と月5万バーツ(約15万円)はゲットできるのでは!?

実際は総額10万円からオープンエアの地代だけで30万円のところも

「開業にあたり、最低でも1ユニット3万5000バーツ(約10万5000円)は必要になります」と教えてくれたのは、マッサージ店のオーナーを養成する学校「タイマッサージ&スパ・アカデミー」の講師だ。

 このユニットには、マッサージ師ひとりの人件費、ベッド、タオル、マッサージ用の着替え、タイガーバーム、マッサージオイルなど客1人をケアするために必要なものが含まれる。これに家賃は含まれないが、極端な話、これぐらいの金額で青空市場でのマッサージや出張マッサージが始められることになるのだ。

 地代は立地条件によって変動があるのは日本もタイも同じ。ちなみにチャトゥチャック・ウィークエンドマーケットの30シートある青空マッサージ店(地下鉄MRT「ガムペーンペット駅」すぐ)の地代は、月10万バーツ(約30万円)もする。エアコンなしの屋外で、気温が30度を超えても、欧米系の観光客がひっきりなしにやってくる。

 1時間250バーツ(約750円)のタイマッサージ、ざっと見積もっても1日7万バーツ(約21万円)の売上げ。

週末(土日)だけなのでトータル月56万バーツ(約168万円)。マッサージ師30人の人件費を引いても、かなりの儲けだ。


 次にマッサージ師の給与形態を調べてみよう。

1日600円しか稼げない現実も

 飛び込みで聞いた“街角マッサージ師”の給料は全員、歩合制だった。歩合以外の基本給などはない。「1日10人のマッサージをして、日給1000バーツ(約3000円)だったこともあったけどねぇ」と、ひと揉んで24年のベテランマッサージ師のピンさんは遠い目をした。マッサージ料金の30~50%を受け取る。あとは店側だ(詳細は:第2回参照)。このパーセンテージが高ければ、彼女たちにとって良い店となる。

 彼女は数えきれないくらい店を渡り歩いたそうだ。「今の店は、24年の中で一番いいの。50%が手に入るのよ。

でもお客さんがねぇ~」。UDDの騒動(2010年取材時に行なわれた反政府デモ)で客が激減し、1日2人しか入らない日もあるという。ホテルの目の前にある店なのに、だ。

 1時間200バーツ(約600円)のマッサージを2人施術すると、彼女の取り分は1日200バーツ。しかも、受け取りは15日ごとだ。店によって支払い日はマチマチだが、5日ごと、1週間ごとと決まっていて、チップがもらえないと日銭はゼロ。ここに彼らにとってのチップの重要性がある。チップがなかった日は、食事も交通費(利用するバスを料金の安いエアコンなしにするなど)も切り詰める。

客を見極めて最適な方法を選ぶのもマッサージも技術のひとつ

 マッサージ歴24年のピンさんは200バーツ(約600円)しか稼げない日もあるが、マッサージの手は抜かない。力加減は絶妙だ。客側からリクエストしなくても、ピンさんの親指は自在に強弱をつける。

「基本的に親指しか使わないマッサージはラーチャ・サムナック式で、もともとは王族への施術方法。

一方、庶民に普及しているチャルーイ・サック式は、マッサージ師が全身を使ってストレッチを施したりするマッサージです」と前述のアカデミーの講師が説明してくれた。

「肘を使うのは、親指だけだと辛いから?」という疑問も多く聞かれるが、肘を使った施術や腰をひねったりするのも、ちゃんとした後者のスタイルだ。総本山として広く知られるところのワット・ポーは、もともとラーチャ・サムナック式だったが、現在はチャルーイ・サック式の要素を取り入れている。

 街角店で評価されるマッサージ師は、この両スタイルを、客の体の状態に合わせてバランスよく施術できる人だ。肘ばかりを使うと日本人客は嫌がる可能性が高い。

 もし、あなたがオーナーになる機会があったら、施術テストのときはこのサジ加減を審査しよう。思いっきり揉んでほしいときにはチャルーイ・サック式。受ける側の注意としては全身の力を抜くこと。痛いときは痛いと伝えよう。

街角オーナーになるなら共同経営が近道

 街角マッサージ店のオーナーになりたいなら、信頼できるタイ人と共同経営するのがいちばんの近道だ。

 手続きはタイ人がやれば比較的スムーズだが、厚生省で認可を受けるときのインタビューでは、目的や店舗状況などしつこく聞かれるそうだ。内装にも決まりがある。

これはSEXがらみのサービスを企んでいないかどうかを探るため。もし、セクシーサービスのマッサージ店(ピンク系マッサージを経営するための学校もある)を経営したいなら、厚生省ではなく商務省の認可になる。

 どちらのマッサージ店にしても、どんな人と組むかがビジネス成功の重要なカギ。余計なお世話だが、恋人よりも私的関係のないパートナーと組むことをお勧めする。

足るを知る「ささやかマッサージ店」、成功するポイント
① 広さよりも立地
② 親指が使えるマッサージ師を雇う
③ マッサージ師の取り分は50%
④ エッチな香りをさせない清潔感
⑤ ていねいな対応(タイ・マッサージ・アカデミーのスタッフが強く進言)


 次回は在住日本人に聞いたマッサージに関するアンケートなどをお届けします。

(文・撮影/『DACO』編集部 『DACO』288号特集より/掲載文中にある家賃、日給等の金額は2010年取材当時のものです。)

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