中古でも良品が格安で手に入る。そこに惹かれてネットオークションサイトやフリーマーケット(フリマ)アプリを常用している人も多いことだろう。
個人と個人がネットを介して直接取引を行えるCtoCマーケットに、第三の勢力として存在感を高めつつある異色のサービスがある。

「ジモティー」は、地域をベースにした個人間取引の掲示板。入り口はネットでも、商品とお金は地元で会っての手渡しが基本という切り口は、これまで日本にはなかったもの。基本的にすべて無料(投稿を上位表示するオプションのみ有料)で使えることも、既存サービスにはない魅力だ。

 ヤフオク!に代表されるCtoCビジネスがここまで伸びた背景には、全国各地からの出品を検索一発で探して比較できる便利さがある。そこにあえて、“地元”という、ネットの利便性とは相反する括りでサービスを構築したことに、ジモティーの着眼のユニークさがある。日本全国へ、そして世界へ視野を広げるのではなく、あえて地元へと視点をシフトすることで見えてくる未開拓の領域があったのだ。

 まずはサイトを開いてみよう。都道府県選択で「東京」を、カテゴリーで「家具」を選択する。すると写真つきで表示される投稿一覧には、このような0円出品もちらほら目につく。ためしに数えてみると、最初のページの50件中15件が0円だった。

 中古の本棚が0円で出品。

「自宅まで取りに来ていただける方に無料で差し上げます」というコメントが添えられている。ちなみに翌日にチェックすると、すでに取引が成立したらしく、この本棚は見当たらなかった。

 こうした家具類やテレビなどの大型家電は、廃棄するにもお金がかかる。かといってネットオークションに出そうにも、配送料が高くて売り物にならない。それゆえ、従来のCtoCビジネスが取りこぼしてきたジャンルだった。

じかに引き渡せるから送料負担から解放される
ネット取引にありがちな不信感も払拭

 ここで“地元”という括りが生きてくる。近場なら取りに行ける。直接手渡しなら、たとえ0円でも双方にメリットがあるので取引は成立する。また、商品の状態をじかに目で確認できるので、「写真と現物が違った」というクレームも生じにくい。さらに、お金も手渡しなので、ネット決済の煩雑さやトラブルとも無縁だ。

 そうしてジモティーが“いらない”と“欲しい”というニーズをどれほど結びつけてきたのかには、ユーザーの声も裏付けになる。

「2人目出産を機にジモティーで部屋の整理。

部屋はスッキリし、1万5000円のお小遣いもできて嬉しい!リサイクルショップだとこの半額にもならないかも!」や、「新居に引っ越す際にジモティーを利用。ダイニングテーブル、チェア、ソファなどを譲ってもらいました」など、双方の立場からのコメントがサイトで紹介されている。

“地元”だからこそ成立する取引ジャンルは他にもある。自動車やオートバイは機関や足回りの状態に個体差が大きく、CtoCマーケットの商品とはなりづらかった。しかし近場なら実車を目で見て確かめられる。そのためジモティーでは中古車も売れ筋商品となっている。

“地元”に目を向けたことで、売買以外にも取り込めたニーズがある。求人、スクールの生徒募集、バンドのメンバー募集などで、それぞれ独立したカテゴリーになっているのだ。

 ジモティーの正式スタートは2011年11月。米国の「クレイグスリスト」など、地域とジャンルを切り口にしたネット掲示板(「クラシファイドサイト」と呼ばれる)が人気を集めていることを参考に、地元で会って取引をするニーズは物余りの日本には必ずあると考えて、サービスを立ち上げた。

 中国のサイト「百姓網」にも成功要因を訊き、サイト作りに生かした。わかったのは、クラシファイドサイト(個人広告を掲載するウェブサイト)の利用者にはネットリテラシーの低いユーザーも多いので、サイト構成は極力簡素にするべきということだ。

 ジモティーのユーザーは40代以上が62%を占めており、地元密着の生活習慣や、ネットよりはテレビが主な情報源であることなどが特徴だ。不要品の個人間取引のニーズを抱えながらもネットが苦手で手を出していなかった彼らを、ジモティーは取り込むことができたのだ。

 日本におけるCtoCビジネスは、「ヤフオク!」などのネットオークションと、「メルカリ」に代表されるフリマアプリに大別される。前者には競り合いの要素もあり、高いネットリテラシーも必要であることからPCからの男性の利用が多い。いっぽう後者はスマホひとつで出品から決済までを行える手軽さからスマートフォンでの若い女性の利用が多い。

 ジモティーはそのどちらにも属さない第三の勢力だ。“地元”に着目することで、従来のサービスが取りこぼしてきた利用者層を取り込むこともできた。非凡な着眼が新たなビジネスチャンスをもたらした例として参考にできることだろう。

(待兼音二郎/5時から作家塾(R)

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