ジンバブエ、ムガベ大統領が“モンスター”になった理由とは? [橘玲の世界投資見聞録]

 それに対してムガベは、2002年にヨハネスブルグで開催された開発に関する世界サミットで次のようにブレアを批判した。

「我々はヨーロッパ人ではない。ヨーロッパのわずか1インチ平方の土地でさえ要求したことはない。だからブレアよ、イングランドをくれてやるから、我がシンバブウェは私のものだ」

 このサミットでムガベは喝采を博し、ブレアには野次が投げかけられた。これをきっかけにイギリスなど欧米のメディアはジンバブエの土地改革を「土地強奪」、支配政党を「腐敗した残忍な独裁」と非難するようになった。

 だが真の問題は、ブレア政権が植民地支配を過去のこととして扱おうとしたことにあると小倉氏は述べる。「今日のジンバブウェの状況を過去と切り離す姿勢と、ジンバブウェ問題をムガベ問題に矮小化する態度とは大いに関連している」。すなわち、植民地問題の「責任」を否認するために、イギリス(ブレア政権)にはムガベという「独裁者」が必要だったのだ。こうして、「人格の破綻したモンスター」というイメージが意図的につくられていく。

 もちろんこれは、ムガベや政権幹部たちが清廉潔白だということではない。だが同じように腐敗している権力者はアフリカ諸国には(残念ながら)いくらでもいる。そのなかでなぜ、ジンバブエだけが極端な経済制裁の対象になるのだろうか。

 それは、ムガベが植民地問題の過去を清算するために白人の土地を接収したからだ。黒人同士の土地争いであれば、彼らはなんの関心も持たなかっただろう――これが、ジンバブエから欧米に突きつけられている「歴史の責任」なのだ。



<橘 玲(たちばな あきら)>

作家。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。「新世紀の資本論」と評された『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ベストセラーに。著書に(以上ダイヤモンド社)など。中国人の考え方、反日、政治体制、経済、不動産バブルなど「中国という大問題」に切り込んだ最新刊

当時の記事を読む

ダイヤモンド・オンラインの記事をもっと見る

トピックス

今日の主要ニュース 国内の主要ニュース 海外の主要ニュース 芸能の主要ニュース スポーツの主要ニュース トレンドの主要ニュース おもしろの主要ニュース コラムの主要ニュース 特集・インタビューの主要ニュース

もっと読む

国内ニュース

国内ランキングをもっと見る

コメントランキング

コメントランキングをもっと見る
2015年5月24日の経済記事

キーワード一覧

このカテゴリーについて

経済、株式、仕事、自動車、金融、消費などビジネスでも役に立つ最新経済情報をお届け中。

通知(Web Push)について

Web Pushは、エキサイトニュースを開いていない状態でも、事件事故などの速報ニュースや読まれている芸能トピックなど、関心の高い話題をお届けする機能です。 登録方法や通知を解除する方法はこちら。