マーケット縮小という逆風により、ワタミに代表される総合居酒屋が苦戦する中、増収増益を続けている居酒屋チェーンがある。ジャンルは異なれど、得意分野に特化して磨き続けるという共通項がある。

各社のトップに、勝ち続ける秘訣を聞いた。第1回は磯丸水産を展開するSFPダイニングの佐藤誠社長。(「週刊ダイヤモンド」編集部 須賀彩子)

──この2年で大量出店し、100店を超えました。

 磯丸水産は、テーブルの上のコンロで貝などをお客さまご自身で焼いてもらう「浜焼きスタイル」の居酒屋で、海の家やキャンプに行ったような気分になれます。

 実際、漁港には漁師さんが集まって、とれたばかりの魚介を焼いて食べる場所がある。そうした雰囲気とシチュエーションを再現しました。

──店内に水槽もありますね。

 とれたての魚や貝を焼くので、圧倒的においしいわけです。そうした味も再現したいと思いました。普通の外食店では、冷凍・冷蔵庫で保管していますが、生きたまま水槽で管理することで鮮度を追求しました。

 水槽は、生け魚と貝との2層構造になっていて、これを開発するのに苦労しました。生け魚と貝とでは、温度管理からバクテリアの管理までノウハウが全く違い、しかもシビアで本当に大変なんです。

 われわれは、魚と貝に特化し、そこに力を全て注ぎ入れています。他社が途中から業態転換して似たような店をつくったところで、設備的にはまねできないでしょう。

──最近の居酒屋チェーンとしては珍しく、駅前の一等地で路面店を展開しています。家賃負担は重くないのですか。

 24時間営業で、居酒屋というのは一つの側面にすぎません。ランチタイムは完全に「海鮮丼屋」です。中途半端なのが午後2時から午後5時までですが、シルバー層のちょい飲み客が増えています。

 深夜や早朝に営業しているのはわれわれくらいですから、残業帰りの方や病院勤務、消防士の方がよく利用されています。

 夜間しか営業していない居酒屋に比べると売上高が大きいので、駅前立地であっても家賃比率は高くなりません。

──外食は、はやり廃りが激しい業界です。

 一過性のブームで終わらないよう、飽きのこない和食を選びました。もともと当社には鳥良という主力業態があり、これも和食だから安定しています。

その経験を磯丸水産でも生かしながら、さらに発展させていくつもりです。

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