■量子力学のはじまりから100年
1925年、ハイゼンベルクが発見した行列形式の理論に始まり、シュレディンガーやディラックらによってまとめられた新たな物理学である「量子力学」が誕生してから、今年で100年を迎えました。
「量子力学」によって、原子や電子などの振る舞いが正確に予測できるようになり、現代社会のさまざまな技術を生み出し、我々の生活を豊かにしてきました。今日、量子力学は情報とも融合し、量子コンピュータなどを生み出す新たな「量子情報科学」の時代に突入し、さらに発展し続けています。
2024年6月7日、国連は2025年をユネスコの「国際量子科学技術年(IYQ)」と宣言しました。宣言によると、この1年間にわたる世界規模の取り組みは「量子科学とその応用の重要性に対する一般の認識を高めることを目的としたあらゆるレベルの活動を通じて実施される」とのことです。
・国際量子科学技術年(IYQ)公式Webサイト: https://quantum2025.org/
■大阪大学QIQBによる今後のIYQに関する取り組みについて
大阪大学QIQBは他のIYQのパートナー機関とともに、量子科学技術のさらなる発展に貢献するため、学際融合研究の推進と次世代を担う人材育成を加速化させるとともに、量子科学の知識普及に積極的に取り組んでまいります。
2月4日には、フランス・パリにて開催されるIYQのオープニングセレモニーへの参加を予定しています。
2025年は、QIQBのある大阪においても、さまざまな大規模科学関連イベントが開催される記念すべき年となります。4月には大阪・関西万博が開幕し、本学からも多数のパビリオンへの出展が予定されています。
【大阪大学QIQB 北川勝浩センター長・特任教授(常勤)・名誉教授のコメント】
量子力学の誕生から100年を記念するIYQの公式パートナーに就任できたことをたいへん光栄に思います。
20世紀に誕生した量子力学は、物質のエネルギーや性質を正確に予測し、化学工業、半導体産業、光通信など現代社会を支える信頼できる理論なのに、量子もつれやシュレディンガーの猫のように不思議な性質ももっています。
20世紀末に、量子力学の不思議な性質を活用して秘密を守る量子暗号や計算を速くする量子コンピュータの研究開発が始まりました。光合成や窒素固定の酵素のエネルギーの正確な計算には、複雑な量子もつれの追跡が必要で、スパコンでも歯が立ちません。量子コンピュータは量子もつれをありのままに扱い、スパコンよりも精密な計算が期待されます。
今はまだ量子的な誤りのためにうまくいきませんが、誤りを訂正しながら計算を行う誤り耐性型量子コンピュータの開発を目指しています。量子力学の不思議な性質を使って正確な計算を行い、生命の不思議を量子レベルで解明するのが、私たちの次の100年の夢です。
■大阪大学 世界最先端研究機構 量子情報・量子生命研究センター(大阪大学QIQB)について
大阪大学QIQBは、2018年に先導的学際研究機構量子情報・量子生命研究部門として設置されてから2度の発展的改組を経て、2021年に現センターとして設立されました。
量子コンピューティング、量子情報融合、量子情報デバイス、量子通信・セキュリティ、量子計測・センシング、量子生命科学の6つの研究グループから構成され、それぞれの分野の研究を発展させるとともに、これらの分野間および他の学問分野との学際融合研究を推進します。
また、国際的な量子イノベーション拠点として、海外の研究拠点との交流を推進するとともに、人材育成から社会実装まで担います。
[公式Webサイト] https://qiqb.osaka-u.ac.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/