藤田医科大学医学部先端光学診療学講座の大宮直木教授らの研究グループ(HomeCam-J studyグループ)は、全国6施設(藤田医科大学、虎の門病院、国立がん研究センター中央病院、東京慈恵会医科大学、増子記念病院、広島大学)において、検査の準備、カプセル内視鏡の内服から終了までのすべての処置を自宅または職場で行う大腸カプセル内視鏡および小腸カプセル内視鏡検査を実施し、その遵守性・安全性・受容性を解析しました。被験者より病院スタッフ宛ての電話やオンラインツールによる操作法の質問などの連絡が30例のうち半数ありましたが、データレコーダに応じた腸管洗浄の遵守率は100%、検査機器取扱遵守率は79%、重篤な有害事象はなしという結果でした。
  これらの成果により、従来病院内でしか施行できなかったカプセル内視鏡検査が今後は自宅や職場で実施可能になり、利便性の向上ならびに大腸・小腸検査の受診率向上に貢献することが期待されます。
本研究成果は、日本消化器内視鏡学会の学術ジャーナル「Digestive Endoscopy」(2025年6月号)に掲載されました。
論文URL : https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39833116/


<研究成果のポイント>

大腸カプセル内視鏡は16例が自宅、8例が職場で施行。データレコーダの登録レジメンに応じた腸管洗浄の遵守率は100%、検査機器取扱遵守率は79.0%、全大腸観察率は83.3%、適切な内視鏡的洗浄度は83.3%、有害事象は我慢できる範囲の一過性の腹痛が1例のみ、半数の被検者から医療スタッフに操作方法に対する確認などの連絡あり。次回の大腸検査として大腸カプセル内視鏡を希望した被検者の割合は67%であった。
小腸カプセル内視鏡は4例が自宅、2例が職場で施行。検査遵守率は100%、全小腸観察率は100%、適切な内視鏡的鮮明度が100%、有害事象なし、半数の被検者から医療スタッフに連絡あり。検査が容易、比較的容易であった被検者の割合は66.0%であった。


<背景>
アメリカ食品医薬品局(FDA)は、小腸カプセル内視鏡に限って自宅での検査を承認しています。具体的には、宅配業者がカプセル内視鏡および検査機器の配送を行い、保険会社のスタッフが遠隔で検査コンサルテーションを行いますが、アメリカ以外の国では承認されていません。一方、大腸カプセル内視鏡の病院外での検査はいずれの国でも承認されていません。本邦でも、カプセル内視鏡は医療機関において医師の監督下での検査実施が義務づけられています。

本研究では大腸および小腸カプセル内視鏡の準備、カプセル内視鏡の内服から終了までのすべての処置を被検者自らが自宅または職場で行う院外検査を実施。その遵守率・安全性・有効性を明らかにしました。


<研究手法・研究成果>


全国6施設で大腸カプセル内視鏡を施行した24人、小腸カプセル内視鏡を施行した6人(いずれもカプセル内視鏡未経験者)の被検者の臨床データ、カプセル内視鏡所見を前向きに収集するとともに、オンラインで藤田医科大学のREDCap※1に入力、保存し、解析。カプセル内視鏡の操作法や腸管洗浄剤の溶解法はQRコードから動画を閲覧できるようにした。
大腸カプセル内視鏡の異常所見(大腸ポリープ等)は37.5%に認めた。医療機関への電話またはオンラインツールでの連絡は、なし(50%)、1回(33%)、2回(13%)、4回(4%)。内訳は検査終了の確認(n=11)、終了方法(n=3)、データレコーダ操作(n=2)、カプセル内視鏡の内服(n=1) 、検査中断希望(n=1)であった。
小腸カプセル内視鏡の異常所見(十二指腸ポリープ)は37.5%に認めた。医療機関への電話またはオンラインツールでの連絡は、なし(50%)、1回(33%)、3回(16%)。内訳は検査終了の確認(n=5)、データレコーダ操作(n=1)であった。


<今後の展開>
スマートフォンなどの電子機器を使い慣れた被検者で、医療従事者によるコンサルテーションがあれば、検査の準備、カプセル内視鏡の内服から終了までのすべての処置を自宅または職場で行うことが可能であることが示されました。本研究のエビデンスに基づき、院外検査が承認されれば、カプセル内視鏡の利便性の向上ならびに大腸・小腸検査の受診率向上に貢献することが期待されます。



<用語解説>


大腸カプセル内視鏡:
従来の大腸検査である大腸内視鏡や注腸造影、大腸CTはすべて、肛門から器具を挿入する検査であったが、大腸カプセル内視鏡は以下の写真のように大きさ32.3mm×11.6mm、重さ2.9gの両端にカメラがついたカプセル内視鏡で、飲み込むだけで検査ができるのが特徴。


                   [画像1]https://digitalpr.jp/simg/2299/115092/150_59_202507301541316889be9b19fd4.png


小腸カプセル内視鏡:
小腸カプセル内視鏡は以下の写真のように大きさ26.2×11.4mm、重さ3.0gの片側にカメラがついたカプセル内視鏡。苦痛や放射線被曝なく、飲み込むだけで小腸全域の内視鏡検査ができるのが特徴。以前は「暗黒大陸」といわれた小腸領域にパラダイムシフトをもたらした画期的な内視鏡である。


                   [画像2]https://digitalpr.jp/simg/2299/115092/150_109_202507301541376889bea1311f9.png


<用語解説>
※1 REDCap:
米国Vanderbilt大学が開発したデータ集積管理システムであり、IT専門家でなくとも簡単にWeb上でデータベースの構築と管理ができ、多施設のデータを簡単安全に集積できるシステム。アカデミック医学研究では世界標準になりつつある画期的な臨床研究支援ツール。


<文献情報>


論文タイトル

Multicenter prospective feasibility study on compliance,
safety, and acceptance of small bowel and colon capsule
endoscopy in the out-of-clinic setting in Japan

著者

大宮直木1, 荒木昭博3, 壷井章克6, 中村佳子4, 伊藤恭子5,堀田直樹1,2,角川康夫4, 岡 志郎6, 斎藤 豊4, 加藤智弘5, 田中信治6,7


所属

1.藤田医科大学 医学部 先端光学診療学
2.増子記念病院
3.虎の門病院 健康管理センター
4.国立がん研究センター中央病院
5.東京慈恵会医科大学附属病院 総合健診・予防医学センター
6.広島大学病院 消化器内科
7.JA尾道総合病院 消化器内科


DOI

10.1111/den.14981


本件に関するお問合わせ先
学校法人 藤田学園 広報部 TEL:0562-93-2868 e-mail:koho-pr@fujita-hu.ac.jp
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