敬愛大学教育学部では、今年度の「こども学Ⅱ」の授業で学生たちが学ぶテーマの1つとして「防災教育」を挙げている。その学びを深めるべく、学生らは授業を担当する小林輝明教授による引率のもと、東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県石巻市と女川町の震災遺構を訪れた。
津波で児童と教職員、合わせて84名が犠牲になった「大川小学校」では、約50分もの時間を待機に費やした後、学校近くの新北上大橋の方向に向かって1分ほど歩いたところで津波に襲われたといわれている。
学生らは実際に学校から海まで行ってみて、海や北上川との距離、堤防と低地が続く周りの地形と背後の山を肌で感じ、当時子どもたちが待機していた校庭で、雪がちらつく当日の天気や状況、子どもたちの様子などに思いを馳せていた。その後、児童の避難経路をたどり、また、裏山へ上るルートを歩きながら、震災当日に思いをつないだ。
学生らは、自分が教師としてその場にいたら「山へ逃げよう」と訴える子どもの前でどういう行動をとれたか、助かる命をどうしたら守れたか、自分事として考えた。
続いて向かった「門脇小学校」では、津波火災の恐ろしさを伝える震災遺構と、当時勤務していた教職員のコメントや映像記録が印象に残った。逃げる手段を即座に続けざまに判断したことが多くの命を救ったことから、学生らは日頃の避難訓練がいかに大切かを実感。一つ一つの資料を噛みしめるようにじっくり見ていた。
また、この日は津波で鉄筋コンクリート造の交番が横倒しになった旧女川交番にも出向き、想像を超えた津波の力の凄まじさを実感した。
学生らはこの訪問で、復興した道路や街並み、復興住宅、一方で全く建物のない広い空間などを移動しながら、多くのものを目にした。
【小林教授のコメント】
この授業では、事実に基づき科学的に判断することがいかに重要かを伝えています。学校教育において、判断力や表現力、そして思考力といったものが求められていますが、そうしたものを教師自身が持っていなければ、子どもたちに身に付けさせられません。教員になる学生には、「子どもの命を預かる」重みをきちんとわかってほしいと思っています。これは机上では学べないので、すべての学生が大川小学校の校庭に立ち、"そのとき"を自分事として実感し、考えを深めてほしいと願っています。
学生たちは今回現場から学んだことを、これからどう生かせるかを自問自答していましたが、危機管理意識をより高めて帰途についたことは間違いないと思います。
【学生のコメント】
Aさん 私は今回、東日本大震災の被災地である小学校を訪れました。現地に行ってみて、押し寄せた津波の高さや、教師がどのような気持ちで避難経路を選択したのかなど、写真や映像では分からなかった現実を体感しました。そこで学んだのは、災害時に大切なのはパニックの中で判断する力だけではなく、その前に行動を起こす準備と意識だということです。教師の判断が、子ども達の生死に関わってきます。「こうしたら児童がけがをしてしまうかもしれない」といった想定で行動を選択するのではなく、まずは「津波が来る」という確実な情報からどう児童を守っていくのか、避難訓練の段階から疑問をもちながら取り組んでいくことが非常に重要だと感じました。
Bさん 今回、石巻市の大川小学校、門脇小学校、旧女川交番を実際に訪れて、東日本大震災での被害の大きさを改めて実感しました。
Cさん 今回の活動を通して、写真や動画などの資料を見るだけでなく、実際に現地を訪れることで「津波の高さは実際にこれくらいだった」といった具体的な情報を得ることができました。また「この高さまで避難できていれば助かっていた」という話を聞き、もし自分がその場にいたら冷静な判断は難しかっただろうと感じました。だからこそ、避難訓練では避難経路や対応の仕方を児童や他の教員と日頃から確認し、いざという時にパニックにならずに行動できるように備えていきたいと感じました。そして、学生である今のうちから今後の防災意識を変えていきたいです。
●災害復興支援ボランティア
https://www.u-keiai.ac.jp/study/community_relations/rebuilding/
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