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※1 感電または物損による死傷事故・破損事故・物損事故(電気工作物の破損等により第三者の物件に被害を与えた事故)・波及事故など。
※2 発電、蓄電、変電、送電、配電又は電気の使用のために設置する工作物のこと。
※3 電気工作物のうち、主に大規模マンション・ビル・オフィス・工場等、電気を多く使用する施設で用いられる、高圧で受電する設備や、一定以上の出力を持つ発電設備(電気事業で用いられるものを除く)。
※4 電気工作物の工事、維持又は運用に従事する者
1. 太陽電池発電設備における台風事故の地形別事例と傾向
台風により発生した太陽電池発電設備の事故について、地形別の具体的な事故事例と、地形別の被害傾向について紹介します。
事例1 丘陵地の谷間における電気工作物の破損(風による被害)
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事例2 半島の突端近くの平地における電気工作物の破損及び物損(風による被害)
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事例3 川沿いの平地における電気工作物の水没(雨による被害)
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事例4 国道沿いの山間部における土砂流出(雨による被害)
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2019年度から2024年度に発生した台風による太陽電池発電設備の事故について、事業場の地形に着目して調べた結果、風通しのよい地形では強風による被害が発生しやすく、河川付近では大雨による浸水被害等が発生しやすい傾向にあることがわかりました(表1)。表1の地形に当てはまる場合には、事故が起きるリスクが高いため、特に注意が必要です。
[表1] 地形別の被害傾向
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NITEが公開している詳報公表システムをお使いになれば、発生地域や電気工作物、キーワード(例:台風、土砂)などによる事故事例の検索が可能です。ご自身が管理されている太陽電池発電設備で想定される事故について、事故内容や、事故後の対策等について調べることもできますので、ぜひ台風対策にもご活用ください。詳報公表システムについて、更に詳しく知りたい方は「5. 参考情報」をご確認ください。
2. 台風事故リスクを低減するための対応ポイント
台風による太陽電池発電設備の被害を軽減するために、接近前・通過後に確認いただきたい基本のポイントをまとめています。気象情報の収集や連絡体制の整備、設備の点検実施など、様々な観点で対策いただくことが大切です。台風通過後の対応方法も整理していますので、ぜひ台風接近時にご活用ください。
台風接近前の対策
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台風通過後の対応
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3. 台風による太陽電池発電設備の事故発生状況(分析結果)
全国の自家用電気工作物における、台風による太陽電池発電設備の事故は、2019年度から2024年度の6年間で54件報告されています。(事故件数は2025年7月時点の値であり、今後変動する可能性があります。
年別に事故発生件数を見ると、特に2019年には、台風19号に代表される大型台風が発生し、例年と比べて事故が突出して多くなっていることがわかります(図3)。台風の発生状況や規模は年によって異なり、予測できないものですので油断せず、日頃から防災対策をしっかり行うことが重要です。
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[図3] 太陽電池発電設備における台風起因の事故件数推移(2019~2024年度)
2019年度から2024年度に発生した同事故について、台風ごとに被害特性(大雨による被害、強風による被害)で分けて被害状況を示します(図4)。この結果から、5割以上(11個中6個)の台風で大雨による被害が、約7割 (11個中8個)の台風で強風による被害が発生していることがわかります。また、約3割(11個中3個)の台風では、大雨と強風両方の被害が出ています。これらのことから、大雨と強風の両方の観点から対策することが重要です。
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[図4] 被害の特性(大雨・強風)別・台風別の被害状況(2019~2024年度)
次に、電気事故が発生した電気工作物について原因別に内訳を示します(図5)。強風、大雨(水没、土砂災害)の被害のうち、強風と水没による被害が全体の約9割を占めていることがわかります。電気工作物別で見ると、太陽電池パネル・架台・PCS・受電設備で事故が発生しており、突出して事故の起きやすい電気工作物はなく、いずれの電気工作物でも事故が発生するリスクがあることがわかります。このことから、様々な観点から対策を行うことが重要です。「2.台風事故リスクを低減するための対応ポイント」を確認し、対策をお願いいたします。
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[図5] 主な原因別・電気工作物別の被害箇所数(2019~2024年度)
(※) 同一事故の中で複数の電気工作物(例:太陽電池パネルと架台)が破損した場合、それぞれの電気工作物の被害箇所を1件として計上しています。
4. 太陽電池発電設備への立入検査の結果について
NITEでは2021年度より太陽電池発電設備などを中心に電気事業法に基づく立入検査を実施しています。
2021年度は17事業場、2022年度は59事業場、2023年度は50事業場、2024年度は58事業場の太陽電池発電所への立入検査を実施しました。ここでは、台風被害が発生するリスクが懸念される指摘事例について紹介します。
改善必須指摘事項
立入検査において、法令に違反するため設置者の対応が必須とされた指摘事項の中で、台風への備えに関連する事例は以下のとおりです。
改善必須事例:
・太陽電池パネルと固定金具の隙間が多数確認された(電気設備に関する技術基準を定める省令(以下、「電技省令」という。) 第4条)。
・横材(パネル受け材)の一部に損傷およびパネル押さえ金具の一部に脱落が確認されたため、物件に損傷を与えるおそれがないように施設されているか確認できない。(電技省令 第4条)。
・ナットの脱落及びボルトのゆるみが確認された(電気設備の技術基準の解釈 第46条第2項 ※建設時の基準を適用)。
→太陽電池パネルを固定する金具や、架台の接合部のボルトが緩んでいないか点検し、ボルトの増し締めを適宜行うことで、パネルの飛散や架台の破損等の事故リスクを低減できます。
・保安規程に定める防災体制が整備されていなかった(電気事業法 第42条第4項)。
→事故に備え、事前に非常時の設備の運用方法や連絡体制を整備しましょう。
特に太陽電池パネルを固定する金具や架台の接合部のボルトなどに異常があると、事故の原因になるおそれがあるため注意してください(図6)。
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[図6] 太陽電池の架台のボルトの緩み例(イメージ図)
改善推奨事項
設備設置後の技術基準改訂により、対応が必須ではないものの、改善を推奨される事項のうち、台風への備えに関連する事例は以下の通りです。
改善推奨事例:
・排水溝の土砂によるつまりが確認できたため、排水能力の低下による土砂流出の懸念がある。これらが敷地外へ流出する可能性もあった(発電用太陽電池設備に関する技術基準を定める省令 第5条)。
・打設不良や地盤の侵食によりスクリュー杭羽根部の露出が確認された。それにより押込み支持力、引抜・水平抵抗力の低下が懸念されるため、杭基礎の安全性が確認できない(発電用太陽電池設備に関する技術基準を定める省令 第 4 条第 5 号)。
架台を固定する杭がしっかり埋まっていないと、風などで杭が引き抜けてしまう可能性が高くなります(図7)。また、豪雨への対策の1つとして、排水溝の機能が低下しないように日頃の点検が大切になります。
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[図7] 杭が必要な根入れ深さまで埋まっていなかった事例(イメージ)
5. 参考情報
参考リンク
※「自然災害による再エネ発電設備の事故防止及び保安管理の徹底」(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/sangyo/electric/detail/shizensaigainocyuikanki.html
※「建築物における電気設備の浸水対策」(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/sangyo/electric/detail/shinsuitaisaku.html
※「災害・防災関連情報」(経済産業省関東経済産業局)
https://www.kanto.meti.go.jp/saigai_kanren/index.html
※「台風接近前の飛来物対策のお願い」(中部近畿産業保安監督部近畿支部)
https://www.safety-kinki.meti.go.jp/electric/syobun/2023/hiraibutsu.html
※「台風情報」(気象庁)
https://www.jma.go.jp/bosai/map.html#5/23.685/120.015/&elem=root&typhoon=all&contents=typhoon
※「破損・浸水した太陽電池発電設備による感電事故防止について(注意喚起)」(経済産業省)https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/oshirase/2021/07/20210705.html
詳報公表システムについて
詳報公表システムは、電気事業法に基づく電気工作物に関する全国の事故情報(詳報)が一元化された国内初のデータベースです。2020年度からの事故情報について順次公開を行っております。本システムは、電気事業者をはじめ、どなたでもご自由にお使いいただけます。事故情報を条件やキーワードで簡単に検索することができ、抽出されたデータはCSVファイルとしてダウンロードすることも可能です。
< 詳報公表システム >
https://www.nite.go.jp/gcet/tso/kohyo.html
[画像14]https://digitalpr.jp/simg/2526/115988/350_204_20250814142033689d72216dd41.jpg
[図8] 詳報公表システム概要
NITE 電力安全センターについて
NITE電力安全センターは、経済産業省(原子力発電設備等以外を所掌)からの要請を受け、電気保安行政(電気工作物の工事、維持及び運用における安全を確保するため行政活動)を技術面から支援するために、2020年5月、電気保安業務の専従組織として発足しました。現在、NITEがこれまで培ってきた知識や経験を活用し、経済産業省や関係団体と連携しながら、電気保安の維持・向上に資する様々な業務に取り組んでいます。
< NITE電力安全センターの業務紹介 >
https://www.nite.go.jp/gcet/tso/index.html
本件に関するお問合わせ先
お問合せ先
独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE) 国際評価技術本部長 伊藤 隆庸
(担当者) 国際評価技術本部 電力安全センター長 東瀬 貴志
電話:03-3481-9823 FAX:03-3481-0536
メールアドレス:tso@nite.go.jp