具体的には、複数の関節を持つロボットの「逆運動学計算」(⽬標位置に到達するための関節⾓度の計算)を、量⼦技術を活⽤して効率的かつ⾼精度に解くことに成功しました。
理化学研究所と富⼠通が共同開発した64 量⼦ビットの実機検証で、その有効性を確認しました。
ロボットの各部(リンク)の向きや位置を量⼦ビットで表現し、親関節の動きが⼦関節に影響する構造を量⼦もつれで再現することで、従来の古典的⼿法と⽐べて必要な計算回数を⼤幅に削減できました。
量⼦コンピューターの実⽤化が進めば、リアルタイム制御や複雑な動作が求められる次世代ロボット開発への貢献が期待できます。
ポイント
・ロボットの関節の動きを量⼦ビットで表現し、量⼦回路を使って順運動学を計算
・量⼦もつれの導⼊で関節間の連動性を再現し、計算速度と精度を向上
・富⼠通の量⼦シミュレーターでの検証で、従来⼿法よりも⾼い精度と実⽤性を確認。また64 量⼦ビットの超伝導量⼦コンピューター(以下、64 量⼦ビットの実機)でも量⼦もつれ導⼊の効果を確認
複雑化するロボットの姿勢計算、量⼦技術で突破⼝
ロボットの姿勢制御では、⽬標とする⼿先の位置から関節の⾓度を求める「逆運動学計算」が重要になります。
特に、複数の関節を持つロボットでは関節の組み合わせが膨⼤となり、⽬標位置との誤差を最⼩化するために反復計算が必要になります。
その結果、計算負荷が⾼くなり、⼈体の関節数と同じ17個の関節を有する全⾝多関節のモデルの場合は、解空間が膨⼤なため解けず、近似した7 個の関節で運動計算を⾏うのが⼀般的でしたが、動きの滑らかさに限界がありました。
本研究では、こうした課題に対して、量⼦コンピューターの特性を活かした新しい⼿法を提案しました。
ロボットの各部品(リンク)の向きや位置を量⼦ビットで表現し、量⼦回路を⽤いて順運動学計算(関節⾓度から⼿先位置を求める計算)を実⾏しています。
逆運動学計算は古典的なコンピューターで⾏い、量⼦と古典のハイブリッド⼿法によって、効率的な姿勢制御を実現しました。
量⼦もつれの導⼊で、収束速度と精度が向上
さらに、量子もつれを導入することで、親関節の動きが子関節に自然に影響を与える構造を量子回路上で再現しました。これにより、逆運動学計算の収束速度と精度が大幅に向上しました。
ヒューマノイドや多関節ロボットへの応⽤に期待
この⼿法は、少数の量⼦ビットで多関節ロボットの姿勢を表現できるため、現在の開発段階の量⼦コンピューター(NISQ)環境でも実装可能です。
将来的には、ヒューマノイドロボットや多関節マニピュレータのリアルタイム制御、障害物回避、エネルギー最適化などへの応⽤が期待できます。
また、量⼦フーリエ変換などの⾼度な量⼦アルゴリズムとの組み合わせにより、さらなる性能向上も⾒込めます。
論⽂情報
著者 ⼤⾕ 拓也(芝浦⼯業⼤学 システム理⼯学部)、⾼⻄ 淳夫(早稲⽥⼤学 創造理⼯学部)、原 伸之(富⼠通株式会社)、瀧⽥ 裕(同)、⽊村 浩⼀(同)
タイトル
「Quantum Computation For Robot Posture Optimization」
掲載誌
「Scientific Reports」Nature Portfolio社 https://www.nature.com/srep/
DOI
https://doi.org/10.1038/s41598-025-12109-0
芝浦⼯業⼤学とは
⼯学部/システム理⼯学部/デザイン⼯学部/建築学部/⼤学院理⼯学研究科
https://www.shibaura-it.ac.jp/
理⼯系⼤学として⽇本屈指の学⽣海外派遣数を誇るグローバル教育と、多くの学⽣が参画する産学連携の研究活動が特⻑の⼤学です。東京都(豊洲)と埼⽟県(⼤宮)に2つのキャンパス、4学部1研究科を有し、約9,500⼈の学⽣と約300⼈の専任教員が所属。2024年には⼯学部が学科制から課程制に移⾏。2025 年にデザイン⼯学部、2026 年にはシステム理⼯学部で教育体制を再編し、新しい理⼯学教育のあり⽅を追求していきます。創⽴100周年を迎える2027年にはアジア⼯科系⼤学トップ10 を⽬指し、教育・研究・社会貢献に取り組んでいます。
早稲⽥⼤学とは
https://www.waseda.jp/top/
早稲⽥⼤学は1882 年、「学問の独⽴」「学問の活⽤」「模範国⺠の造就」を建学の理念として設⽴された、11の学術院のもとに学部・⼤学研究科・専⾨職⼤学院を有する総合⼤学です。
富⼠通株式会社とは
富⼠通のパーパスは、イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくことです。世界中のお客様に選ばれるデジタル・トランスフォーメーション(DX)パートナーとして、約11万3,000⼈の富⼠通グループ社員が、世界が直⾯する様々な課題の解決に取り組んでいます。富⼠通が注⼒する5つの重点技術領域である、AI、コンピューティング、ネットワーク、データ&セキュリティ、およびコンバージングテクノロジーを駆使した幅広いサービスとソリューションを組み合わせ、サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)を実現します。
富⼠通 (東証:6702) の2025 年3 ⽉期の連結売上⾼は3 兆6,000 億円 (230 億⽶ドル) で、国内ITサービス市場におけるベンダー売上でトップシェアを維持しています。
詳しくは、富⼠通の公式ウェブサイト(https://global.fujitsu/ja-jp
)をご覧ください。
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