【本件のポイント】
・直径0.8nm以下の単層カーボンナノチューブに内包されたカーボンチェーンを合成
・エネルギー的に最も安定な状態でカーボンチェーンが単層カーボンナノチューブに内包
・前駆体分子の濃度を制御することで内包カーボンチェーンの高収率化を達成
【研究の背景】
数十個以上の炭素原子が一次元状に連なった長鎖カーボンチェーンは、世の中で"最も硬い物質"とされ、また、炭素鎖の長さによりバンドギャップが変化するなど、興味深い物性を示すことが予想されています。しかし、カーボンチェーン単独では大気中で安定に存在できないため、その性質はよくわかっていません。そこで、カーボンチェーンをカーボンナノチューブ(CNT)の中心空洞部に内包することで大気中でも安定な状態に保つ試みがなされています。CNTに内包されたカーボンチェーンの分析を行う場合、結晶構造の単純な単層のCNT(単層カーボンナノチューブ:SWCNT)に内包することが有効です(図1)。特に、直径0.7-0.8nm程度のSWCNTに内包した場合、カーボンチェーンがSWCNTの中心部に位置し、エネルギー的に最も安定な構造となります。しかし、カーボンチェーンの高収率合成は、これまで直径1.0nm以上のSWCNTに対する報告しかありませんでした。今回、新たにカーボンチェーンを形成する前駆体に水素末端ポリイン分子 注3)を用い、その濃度を調整することで、直径0.8nm以下の細径SWCNT内に高収率でカーボンチェーンを内包させることを試みました。
本件の詳細については、添付PDFもしくは本学サイトニュースリリースをご覧ください。
名城大学ニュースリリースURL: https://www.meijo-u.ac.jp/news/asset/08296d00985612f781a9b3691c9299d7.pdf
【研究助成金】
・名城大学ナノマテリアル研究センター
【用語の解説】
1) 単層カーボンナノチューブ(Single-Walled Carbon Nanotube: SWCNT)
カーボンナノチューブ(CNT)は炭素原子のみから成る六角網面(グラフェンシート)を円筒状に巻いた構造の物質ですが、特に1層から成るものを単層カーボンナノチューブ(SWCNT)と呼びます。直径は1~数ナノメートル程度で細いものは1ナノメートル以下のSWCNTも存在します。
2) カーボンチェーン
炭素原子が鎖状につながった構造の1次元状のナノカーボン材料。
3) 水素末端ポリイン分子
炭素原子が鎖状につらなった分子で両端に水素原子が結合した形状をしています。炭素の数により、C6H2、C8H2などいろいろな分子があります。直線状の分子なので、直径の細いSWCNTにも内包されやすいと考えられています。
【掲載論文】
・タイトル: Highly efficient synthesis of small-diameter single-walled carbon nanowires through transformation of polyyne molecules into long linear carbon chains inside single-walled carbon nanotubes
・著者: Takahiro Maruyama, Haruma Sunako, Chen Zhao, Takahiro Saida, Yuichi Haruyama, Shu Morita, Minoru Osada, Xinluo Zhao
・掲載誌: Chemical Physics Letters
・DOI: 10.1016/j.cplett.2025.142308
・URL: https://doi.org/10.1016/j.cplett.2025.142308
【お問い合わせ先】
・研究内容に関すること
名城大学 理工学部 教授 丸山隆浩
TEL:052-838-2386
E-mail:takamaru@meijo-u.ac.jp
・広報担当
名城大学渉外部広報課
TEL: 052-838-2006
E-mail: koho@ccml.meijo-u.ac.jp
▼本件に関する問い合わせ先
名城大学渉外部広報課
住所:愛知県名古屋市天白区塩釜口1-501
TEL:052-838-2006
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メール:koho@ccml.meijo-u.ac.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/