大正製薬株式会社[本社:東京都豊島区 社長:上原 茂](以下、当社)は、老化を加速させるSASP※1を抑制する因子PPAR※2を特定し、肌老化を抑制する可能性を見出しました。本研究成果は2025年8月16日~17日に開催された第43回日本美容皮膚科学会総会・学術大会にて発表いたしました。


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老化細胞のSASPを抑制し肌の老化を制御する(イメージ図)


【研究の背景】
当社では、老化を抑制することを目指し、細胞レベルでの老化研究を行っています。これまでの研究から、ミトコンドリアに存在する酵素Mitochondrial Ubiquitin Ligase(マイトリガーゼ)の減少が細胞老化を誘導すること※3、さらに老化した細胞が肌の乾燥やシミの原因となることを明らかにしました※4、5。また、老化した細胞はSASP因子と呼ばれる生理活性物質を分泌し、それが周囲の細胞老化を引き起こす、いわば老化の連鎖が生じることもわかっています。
当社では、このSASPを抑制することが、老化を根本から抑制する上で重要であると考え、新たなSASP抑制因子の探索と独自に構築した老化表皮モデルを用いた検証を行いました。

※3 2024年4月17日発表『若返りの鍵「マイトリガーゼ」と肌老化の関係を多角的に解明』
URL https://www.taisho.co.jp/company/news/2024/20240417001535.html
※4 2024年1月31日発表『細胞老化が肌のバリア機能に重要な結合型セラミドを減少させる新知見』
URL https://www.taisho.co.jp/company/news/2024/20240131001492.html
※5 2023年8月3日発表『シミの引き金であるメラニン生成指令を酵母エキスが抑制』
URL https://www.taisho.co.jp/company/news/2023/20230803001363.html

【研究の成果】
1.老化細胞が及ぼす悪影響、SASPを抑制する因子の発見
肌老化を抑制することを目指すためには、周囲の細胞に老化を引き起こすSASPを抑制するターゲット因子を特定することが必要です。SASPの“司令塔”とされているNF-κB※6を抑制できる因子を探索したところ、細胞内に存在し、細胞内の代謝と細胞の分化に関わる核内受容体PPARを活性化させると、SASP因子の一つであるIL-6の発現上昇が抑えられることが明らかになりました(図1)。

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図1 PPARの活性化により老化細胞におけるSASP因子の上昇が抑制される

2.SASP抑制因子が、老化細胞により引き起こされる表皮の変化や老化マーカーの上昇を抑制する
正常な表皮細胞の一部に老化細胞を混ぜて、実験的に培養表皮を作製し(老化表皮モデル)、PPARの活性化による作用を検討しました。PPARの活性化により、老化細胞が引き起こす表面状態の荒れや表皮構造の乱れが抑制され(図2)、老化細胞によるバリア機能の低下も抑えられました(図3)。さらに、老化表皮モデルの内部で認められた老化マーカーの発現も、PPARの活性化により抑制されることが明らかとなりました(図4)。


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図2 PPARの活性化により老化細胞が引き起こす表皮変化が抑制される


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図3 PPARの活性化により肌のバリア機能低下が抑制される


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図4 PPARの活性化により老化マーカーが抑制される

【今後の展望】
細胞の老化は、マイトリガーゼの減少によるミトコンドリア機能異常などの要因で進行します。さらに、老化細胞は周囲に悪影響を与える物質を放出し(SASP)、これが正常な細胞の老化を誘発することで、老化は加速度的に進んでしまうと考えられます。肌においても、加齢に伴い老化細胞が蓄積することが確認されています。
しかし、当社の研究により、細胞内に存在する受容体PPARを活性化させることで、SASPが抑制され、老化細胞が引き起こすさまざまな変化を抑制できることが明らかとなりました。本知見は、肌の老化を根本から制御し、いつまでも若々しい肌を実現するための新たなアプローチとして期待が持たれます。
当社は、健康で美しくあり続けたいと願う生活者の方々に向けて、これからも美しい肌に繋がる先端の美容研究を進め、その研究成果を皆様にお届けしてまいります。

【用語説明】
※1 SASP(細胞老化関連分泌形質):老化細胞が炎症性サイトカイン、増殖因子、マトリックスメタロプロテアーゼなど種々の生理活性因子を分泌する現象。
※2 PPAR(ペルオキシソーム増殖剤活性化レセプター):炭化水素、脂質、タンパク質等の細胞内代謝と細胞の分化に関与する核内受容体。

【参考文献】
※6 Ghosh K, Capell BC., J Invest Dermatol., 2016;136(11):2133-2139.


本件に関するお問合わせ先
コーポレートコミュニケーション部  TEL:(03)3985-1111(代表)
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