筆頭・責任著者 原田 祐輔 (保健学部リハビリテーション学科作業療法学専攻 講師)
研究のハイライト
・ 全国の作業療法士を対象に、3Dプリンタ活用の実態を初めて大規模に調査しました。
・ 活用経験があるのは全体のわずか4.4%で、主に脳卒中リハビリテーションで使用されていました。
・ 使用経験に最も強く関連していたのは「3Dプリンタの所有・利用環境」であり、知識や個人特性よりも大きな影響を持つことが明らかになりました。
・ 導入を阻む要因として「職場に設備がない」「使い方がわからない」が挙げられました。
背景
3Dプリンタ*1は、個々の患者に合わせた自助具*2やリハビリテーションの用具を作成できるため、医療・リハビリテーション分野での活用が期待されています。特に作業療法士は、患者の生活支援や自助具の工夫を担う専門職であることから、3Dプリンタの臨床応用において重要な役割を果たす可能性があります。しかし、日本における作業療法士による3Dプリンタ利用の実態や課題については、これまで十分に明らかにされていませんでした。
研究概要
一般社団法人日本作業療法士協会に登録されている全国13,668施設の作業療法士に対し、オンライン質問紙調査を実施しました。回答者3,469名のうち、3Dプリンタを使用した経験があるのは153名(4.4%)でした。
研究の意義
本研究は、作業療法における3Dプリンタ活用の現状と課題を全国規模で初めて明らかにしたものです。結果から、3Dプリンタの普及には「知識の習得」だけでなく「実際に触れる環境の整備」が不可欠であることが示されました。臨床現場で3Dプリンタにアクセスできる環境を整え、教育や研修の機会を充実させることで、患者一人ひとりに合わせた自助具やリハビリテーションの用具の提供が可能となり、作業療法の質の向上につながることが期待されます。
掲載論文
発表雑誌名
Disability and Rehabilitation: Assistive Technology
論文タイトル
A nationwide survey on 3D printer utilization among occupational therapists in Japan
著者
Yusuke Harada 1*, Yuki Sawada 2 , Hiroshi Momma 3 , Rie Takeshima 2 , Jun Suzurikawa 4
著者(日本語表記)
原田 祐輔1*, 澤田 有希2 , 門馬 博3 , 竹嶋 理恵2 , 硯川 潤4
*責任著者
所属
1. 杏林大学 保健学部 リハビリテーション学科 作業療法学専攻,2.帝京科学大学 医療科学部 作業療法学科,3. 杏林大学 保健学部 リハビリテーション学科 理学療法学専攻,4. 国立障害者リハビリテーションセンター研究所 福祉機器開発部
用語の解説・注釈
*1 コンピュータで設計した立体データをもとに、樹脂などの素材を積層して立体物を作成するプリンタです。金型や特別な工作技術がなくても、オーダーメイド品を短時間で作成できるのが特徴です。
*2 障害や加齢などによって日常生活活動の遂行が難しくなった人が、自分で食事・着替えなどを行えるよう工夫された道具です。例えば、握力が弱い人向けのスプーンや、ボタンをかけやすくする道具などがあります。
▼本件に関する問い合わせ先
杏林大学 保健学部 リハビリテーション学科 作業療法学専攻
講師 原田 祐輔(ハラダ ユウスケ)
TEL:0422-47-8000(代表)
メール:y-harada@ks.kyorin-u.ac.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/