1.取り組みの背景
国内の上下水道事業は、自治体の財政難や技術者不足、施設の老朽化など、さまざまな問題を抱えています。
一方、上下水道施設の運転・維持管理業務において、数百から数千にまで及ぶ機器や設備の保守・点検作業は、現場作業員(運転管理員)の巡回、目視などにより行われており、五感や熟練の技術に頼る部分が多くを占めています。しかし自治体では技術者不足に対し、十分な人材の確保と教育が大きな課題となっており、現場業務のさらなる効率化が求められています。
このような事業環境の中、数多くの公民連携事業に参画してきた実績、事業運営と施設の維持管理で培った豊富な経験とノウハウおよび効率化を実現するさまざまなソリューションを有しているメタウォーターグループと、多くの地域でDXを推進してきた実績、また通信環境の構築で培った現地エンジニアリング力を持つNTTグループとで、持続可能な水インフラの実現のため、情報通信ネットワークの最適化、および保守点検業務の自動化の実現に向けて、実証実験を実施することとなりました。
※1 ウォーターPPP
2023年6月に政府より提示されたコンセッションに段階的に移行するために新設された新たな公民連携方式
2.取り組み概要
(1)上下水道施設における情報通信ネットワークの最適化
上下水道施設は、広大な敷地、高低差のある空間で、堅牢な造りの建屋など、情報通信ネットワークの構築にあたって考慮すべき特徴が数多くあります。また保守点検業務自動化を目指す上で、映像・センシングデータなど、取得するデータに合わせて最適なネットワークを設計するとともに、コスト効率も意識する必要があります。
そこで、NTTグループが提供する多様なネットワークラインアップとノウハウ、および現地の通信環境の構築で培ったエンジニアリング力と、メタウォーター独自の情報通信プラットフォーム「WBC(Water Business Cloud)※2」、およびオペレーションサポートセンター(OSC)※3」を連携させることにより、保守点検業務の自動化の基盤となる、上下水道施設における最適な情報通信ネットワークの構築を目指します。
※2 WBC(Water Business Cloud)
WBC(ウォータービジネスクラウド) | ソリューション | メタウォーター株式会社
https://water-business-cloud.com/
※3 オペレーションサポートセンター(OSC)
メタウォーターの名古屋事業所、荒尾事務所内に設置されていて、受託プラントの運転状況を一元的に監視している施設。ベテラン作業員が24時間体制で運転最適化や緊急時対応などをサポート
<取り組みイメージ>
[画像1]https://digitalpr.jp/simg/2341/118701/700_396_2025092511461868d4acfabade6.png
(2)上下水道施設における保守点検業務の自動化
現場作業員が実施している機器や設備の確認から判断、記録に至る保守点検業務の一連のオペレーションを情報通信ネットワーク(前述)を基盤として、ネットワークカメラやIoTセンサーによるセンシング、また生成AIの活用により、人手を介すことなく成立させることができるソリューションの開発と検証を実施します。
また、AIが異常を検知した場合、現場作業員に警報を発報するとともに、メタウォーターのオペレーションサポートセンター(OSC)へ通知され、ベテランスタッフからの必要な助言、指示によりプラントの安定運転をサポートします。
生成AIの活用は記録だけでなく、将来的には業務フローの見直しや、社員教育への活用も視野に入れ、持続可能な上下水道施設の運営をサポートする仕組みの実現を目指します。
<取り組みイメージ>
[画像2]https://digitalpr.jp/simg/2341/118701/700_382_2025092511461868d4acfa1a6e3.png
3.実施場所および実施時期
宇都宮市上下水道局 清原水再生センター※4にて実証を行います。
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【場所】宇都宮市上下水道局 清原水再生センター(栃木県宇都宮市清原工業団地3番地4)
【期間】2025年10月1日~2027年3月(予定)
※4 宇都宮市上下水道局 清原水再生センター
メタウォーターグループは宇都宮市より「清原水再生センターほか2か所包括的維持管理業務委託契約」(2024年4月1日~2029年3月31日)を受託しており、受託業務の品質向上・業務改善を目的として実証実験を実施
4.今後の展開について
メタウォーター、およびNTTグループは今回の実証実験により、IoT/AIを活用した上下水道施設における場内ネットワーク環境の最適化や保守点検業務の自動化などの有効性を検証し、本格実装に向けた検討を進めていきます。また、自治体のインフラ運営など様々な課題に対し、本実証実験で得られた成果を活用し、地域の課題解決を目指していきます。