SASの専門家13人が銀行業界を再定義する技術革新、盲点、転換点を予測、
金融機関の“準備不足の現実”を明らかに

データとAIのリーディング・カンパニーである米国SAS Institute Inc.(以下、SAS)は、2026年に向けて金融業界で予想される主要なトレンドについて発表しました。金融業界では、いまやAIの実験段階は終わりを迎え、2026年は、自律型エージェントが顧客との実対応を担い、合成データが中核レポジトリに影響を及ぼし、信頼が測定可能なパフォーマンス指標となる新しい段階へと突入しています。
問題はもはや、AIが銀行業務を変革するかどうかではなく、すでに加速しているAIによる変革がもたらす結果に金融機関がどう備えているかどうかです。

エージェンティックコマースを巡る議論から量子コンピューティングを活用したリスクモデリングに至るまで、SASの専門家が金融業界の行方を左右する13の予測を立てています。インテリジェントバンキングを競争力に変えられる金融機関となれるか、依然として基礎対応にとどまる金融機関となるか、その分水嶺となる論点と、銀行は何を知っておくべきなのかを明らかにしています。

検証可能なインテリジェンスが信頼の新たな基準に
AIは金融機関をより迅速で、より賢く、そして時に“過度な自信”を持たせる存在にしてきました。AIは、与信管理、不正検知、カスタマーサービスなど、銀行業務をインテリジェントなシステムに変え、ミリ秒単位で迅速に意志決定を行っています。しかし、金融業界が最も人間的で重要な原則である「信頼」を見失ってはいないでしょうか。信頼は、与えられるものではなく、実績とともに構築されるべきものです。2026年、銀行がモデル主導型の意志決定から根拠と透明性に裏付けされたインテリジェンスへと移行するにつれ、信頼( https://www.sas.com/ja_jp/gc/data-and-ai-impact-report.html
)は約束から測定可能なパフォーマンス指標へと変容するでしょう。あらゆる予測、意志決定、顧客対応において検証可能な透明性を求めることが、インテリジェンスの新たな標準となります。つまり、証明できない予測は、信頼に値しない時代の到来です。
― SAS グローバル金融サービス担当ディレクター、アレックス・キアットコウスキ(Alex Kwiatkowski)

エージェンティックAIは可能性から実用段階へ
2026年は、企業全体で半自律型システムが意義ある業務を担い始める中、エージェンティックAIが金融業界でも本格稼働する年となるでしょう。インテリジェントバンキング( https://www.sas.com/ja_jp/whitepapers/intelligent-banking-the-future-ahead.html
)の未来は、顧客リクエストの処理、業務フローの調整、ガバナンスが効いた説明可能な意志決定を大規模に実行するAIエージェントによって形成されていきます。
こうした変化は、銀行による業務設計の方法や、AIの価値の測定方法を根本的に変えることになります。IDCによると、金融サービス企業のAI投資額は2028年までに670億ドルを超えると見込まれています。中でも、意志決定や業務オペレーションに直結する本番環境への導入が最大の成長分野となるでしょう。実証実験の段階を終え、AIを産業化し、パイロット版を収益へ、そしてガバナンスを競争優位性へと転換できる銀行が成功するのです。
― SAS リスク・不正対策およびコンプライアンスソリューション担当グローバルソリューション戦略ディレクター、ディアナ・ロスファス(Diana Rothfuss)

「助けて!AIエージェントが勝手に900ドルのトースターを買ってしまった」―ロボショッピングの後始末は、銀行の新たな責務に
コールセンターから経営層に至るまで、金融機関は急速に拡大するエージェンティックコマースの影響に直面することになります。顧客が意図しない購入を自律型AIエージェントが行ったことで、銀行では異議申し立てが急増するでしょう。同時に不正対策チームは、犯罪者が正規のAIエージェントを乗っ取り、模倣することで生じる新たなリスクへの対応を迫られます。エージェンティックコマースが拡大する中、銀行はもはや個人だけでなく、その代理として行動するAIエージェントそのものを認証する必要があり、すでに困難を極める金融犯罪対策に新たな複雑性が生まれています。エージェンティックトークン、行動認証、動的リスクスコアリングといったフレームワークは、銀行と顧客の双方の収益を守るための最前線となるでしょう。
― SAS グローバル・バンキング・シニア・マーケティング・マネージャー、アダム・ナイバーグ(Adam Neiberg)

合成データ汚染に備え、銀行はデータの純度を守る保管庫を構築
銀行は、生成AIや合成データが気付かぬうちに中核データレポジトリに流入するようになり、データ完全性の新たな危機に直面するでしょう。過去の個別のデータ品質問題とは異なり、生成AIは大規模かつ極めてリアルな形でエラーを引き起こす可能性があり、データ汚染の問題を検出することは極めて困難です。モデル開発を加速させる目的で合成データを実験的に導入する中で、多くの組織が気付かぬうちに、与信・不正・リスク判断の意志決定パイプラインにバイアスや歪みを生じさせてしまう恐れがあります。
重要なワークフローを守るため、銀行は管理されたデジタル保管庫でゴールデンソースとなるデータを格納するとともに、生成AIツールが中核データセットとどのように接続・利用できるかについて、より厳格なガバナンスを課すようになると考えられます。
― SAS エンタープライズ不正対策ソリューション担当ディレクター兼グローバルリード、イアン・ホームズ(Ian Holmes)

生成AIナレッジエージェントが非構造化データの価値を最大化
2026年、生成AIは、構造化データにおける統計学と同様の役割を、非構造化データの世界で果たすようになり、銀行は膨大な非構造化データから意味とインサイトを大規模に抽出できるようになるでしょう。企業データの80%以上はテキストや画像などの非構造化データであり、その量は毎年50%~60%のペースで増加しています。銀行は、大規模言語モデルとRAG(検索拡張生成)を活用したナレッジエージェントを導入し、これまで十分に活用されていなかった非構造化データから迅速に実用的なインサイトを引き出します。その結果、戦略的なビジネス意志決定を加速し、より能動的でインテリジェンス主導の取り組みへとリスク管理を変革( https://www.sas.com/ja_jp/whitepapers/transforming-risk-management-114285.html
)していくことでしょう。
― SAS リスクモデリング・意志決定・ガバナンス担当グローバルディレクター、テリサ・ロバーツ(Terisa Roberts)

ロマンス詐欺がエージェンティック化で急増
AIを活用したロマンス詐欺はすでに存在し、今後は感情操作を大規模に自動化することで、被害は記録的な水準まで急増するでしょう。従来では数週間から数ヶ月を要したプロセスも、今では最小限の労力で自動化・高速化することが可能になりました。人の直感だけでは見分けがつかない時代に、金融機関は顧客の“感情的ファイアウォール”となることを求められます。金融機関は行動分析やAIモニタリングを組み合わせ、金銭的損害が発生する前に搾取パターンを検知することが求められます。
― SAS リスク・不正・コンプライアンスソリューション担当シニアバイスプレジデント、スチュ・プラッドリー(Stu Bradley)

AI投資の急増により、金融犯罪対策テクノロジーが再編
金融犯罪対策市場は、ベンダー各社が高度なAIを自社製品に組み込むことに苦戦する中、今後1年間で大きな変革を迎えることになるでしょう。昨今の事業売却は、時代遅れの基盤を刷新するために必要な再投資の規模を浮き彫りにしています。既存のプラットフォームにAIを後付けする困難さが明らかになるにつれ、最も輝きを放つのは、AIプラットフォーム上にネイティブに構築された金融犯罪対策技術です。
2026年、金融機関は複雑なパターンを可視化できるクラウドネイティブでAI主導のAML(マネーロンダリング対策)および不正対策ソリューションの導入を加速させることでしょう。SASが実施したACAMSの会員を対象にした最新調査( https://www.sas.com/en/whitepapers/global-aml-research-the-road-to-integration-114143.html
)によると、多くの金融機関は既に、AMLの近代化にAIが不可欠であると認識しています。説明可能なリアルタイム分析へと移行する銀行は、コンプライアンスとリスク管理の両面で大きな優位性を獲得することでしょう。
― SAS バンキング・コンプライアンス・ソリューション部門 北南米リード、ベス・ヘロン(Beth Herron)

AIとクオンツ信用が債券市場の効率性を向上
AIモデルにより、クオンツ信用戦略の成長は、新たな情報、代替データ、先行信用指標を迅速に取り込み、社債市場における価格発見を加速させます。アクティブ債券運用チームは、格付け中心のワークフローから脱却し、機械学習主導の柔軟な意志決定基盤へ移行するでしょう。この進化には、強力なデータガバナンスと厳格なモデルリスク管理が不可欠です。加えて、信用リスク評価モデリング( https://www.sas.com/ja_jp/news/press-releases/2025/november/model-predicts-credit-rating-changes.html
)のイノベーションが、投資家の損失削減と機会獲得を後押しすることでしょう。
― SAS 定量調査およびリスクデータ・ソリューション部門ヘッド、スタス・メルニコフ(Stas Melnikov)

バブル認識型リスク管理は、2026年に標準になるべきだが…ならない
2026年、先進的な銀行や資産運用会社は、価格設定、資産負債管理(ALM)、ストレステストにおいて、バブル認識型モデルの組み込みを始めるでしょう。これらのモデルは、資産価格をファンダメンタル要因に分類すると同時に、リスクプレミアムや一時的なバブル要因を明示的に分析します。これにより、企業は資産価格が急激かつ持続不可能な形で上昇する要因を把握できるようになります。これらのモデルは2026年にはすべての銀行にとって標準的な手段となるべきですが、困難であると私は予測します。
― SAS 定量調査およびリスクデータ・ソリューション部門アドバイザー兼業界コンサルタント、ロバート・ジャロー(Robert Jarrow)

ステーブルコインは理論から実践へ
米国と欧州の企業間決済が、数日ではなく数分で完了する世界を想像してみてください。
まだ実現には至っていませんが、今後1年で、規制対象のステーブルコインが銀行における実運用のパイロット段階へ入る見込みです。米国および欧州での枠組みが明確化するにつれ、銀行は国際送金やトレジャリー業務において、資金移動の高速化、コスト削減、透明性向上といった本質的なメリットを活かすべく、ステーブルコインの検証を開始するでしょう。また、一部の銀行は、より高い監査性とコンプライアンスを備えたデジタル決済基盤での資金移動に向け、トークン化預金の検討や認可発行体との提携も模索することになります。これらの初期パイロットは、国際決済の近代化に向けた重要な一歩を示すものです。
― SAS アジアパシフィック、アンチマネーロンダリング(AML)リード、アーメド・ドリッシ(Ahmed Drissi)

リテール銀行は、コマースメディアの検証段階から本格展開へ
2026年末までに、すべてのリテール銀行は、名称は何であれ、何らかのメディア戦略を策定するようになるでしょう。過去12~18か月間、ひそかにこのモデルを試験運用してきた銀行は、広告主やブランドが検証済み財務データの価値を認識するに伴い、顕著な収益増加を報告し始める見込みです。金融メディアネットワーク( https://www.sas.com/en_us/news/press-releases/2025/december/commerce-media-in-retail-banking.html
)を事業として運用する金融機関は、2年以内に非資金利益を20~30%増加させることが現実的となるでしょう。
― SAS 広告事業開発担当ヘッド、コーネリア・ライティンガー(Cornelia Reitinger)

銀行は気候リスクのストレステストを本格導入へ
暴風雨、山火事、干ばつといった気候変動により銀行のポートフォリオに与える影響が世界的に深刻化する中、金融機関は、顧客、規制当局、株主から気候リスク管理を強く求められています。2025年には、気候リスク規制への不適合を理由に、銀行に初めて罰金が科されました。こうした状況を受け、銀行はモデリング、ガバナンス、インフラにおけるギャップを解消するため、気候リスクストレステスト( https://www.sas.com/en/whitepapers/climate-stress-testing-methodologies.html
)を強化すると予測されます。増大する圧力に効果的に対応するには、気候リスクのストレステストを、日常的なリスク管理のフレームワークとより密接に統合することが不可欠となるでしょう。AIを活用したストレステストのプロセスの自動化と統合は、気候リスク対応にとどまらず、欧州中央銀行が最近発表した地政学リスクを巡るリバースストレステストなど、新たに求められるシナリオ分析への対応においても極めて重要な実行手段となります。

― SAS EMEAプリンシパル・リスク管理アドバイザー、ピーター・プロチャン(Peter Plochan)

金融業界は量子AIによって飛躍的進歩へ
2026年は、量子AIが金融業界の様相をいかに変革するか( https://www.sas.com/ja_jp/news/press-releases/2025/may/quantum-ai.html
)、その兆しが初めて具体的に現れる年になるでしょう。量子と従来型コンピューティングを組み合わせたハイブリッド型のコンピューティングは、実証段階から実用段階へ移行し、リスク管理や不正対策において画期的な成果をもたらすでしょう。特に従来のモデルでは精度が低下しがちな領域において、銀行がいかに最適化、シミュレーション、意志決定を行うかについて、新たな可能性を押し広げることになります。早期に経験と知見を積み上げた銀行は、精度、俊敏性、パフォーマンスを飛躍的に向上させ、競合他社に対して圧倒的な優位性を獲得することでしょう。
― SAS グローバル・バンキング・ストラテジスト、ジュリー・マクレロイ(Julie Muckleroy)

予測を深掘りし、解決策を
AIが金融業界に与える影響は、SAS専門家による13の予測をはるかに超えています。業界横断での2026年テクノロジートレンド( https://blogs.sas.com/content/predictions/
)をご覧いただくとともに、SASの銀行向けソリューション( https://www.sas.com/ja_jp/industry/banking.html
)が、どのようにして検証可能なインテリジェンスを信頼できる意志決定へと変えていくのかを参照ください。

*2025年12月16日に米国SAS Institute Inc.より発表されたプレスリリースの抄訳です。本プレスリリース( https://www.sas.com/en_us/news/press-releases/2025/december/banking-predictions-2026.html
)の正式言語は英語であり、その内容および解釈については英語を優先します。

SASについて
SASはデータとAIのリーディング・カンパニーです。SASの革新的なソフトウェアと業界特化型のソリューションが、世界中のお客様にデータを信頼できる意志決定に変換するパワーを届けています。SASは「The Power to Know®(知る力)」をお届けします。
*SASとその他の製品は米国とその他の国における米国SAS Institute Inc.の商標または登録商標です。
その他の会社名ならびに製品名は、各社の商標または登録商標です。
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