― 腸内細菌の分解酵素と栄養素摂取量が鍵 ―

学校法人藤田学園 藤田医科大学 医学部 消化器内科学講座および医科プレ・プロバイオティクス講座(廣岡芳樹教授)、ならびに名古屋学芸大学大学院 栄養科学研究科(藤木理代教授)、ウェルネオシュガー株式会社などの研究グループは、プレバイオティクス(フルクタン)摂取による腸内細菌応答の“個人差”と摂取栄養素および食物との関連を報告しました。
本研究成果は、2025年11月28日に国際科学誌『Foods』(MDPI)に掲載されました。

▶︎ 論文URL:https://doi.org/10.3390/foods14234090


<研究成果のポイント>

ケストース+イヌリン摂取により、特定ビフィズス菌(B. adolescentis, B. longum)が有意に増加
両菌が増加した被験者(レスポンダー群)では、腸内の分解酵素遺伝子GH32(inuA, cscA)の発現も上昇
レスポンダー群では、緑葉野菜・ツナ缶の摂取量が多く、栄養素(レチノール、C16:3脂肪酸)との相関も確認


<研究の背景>
近年、腸内環境の改善を目的としたプレバイオティクス(腸内の有益菌を増やす食品成分)の注目が高まっています。中でもフルクタン(短鎖=ケストース、長鎖=イヌリン)は、ビフィズス菌を増やす代表的な成分として知られていますが、人によって効果に差があることが課題でした。
本研究では、腸内細菌のフルクタン分解酵素群「GH32遺伝子」と個人の食事内容の違いに着目し、どのような要因が応答性の違いを生むのかを検証しました。


<研究の方法>


試験デザイン:ランダム化二重盲検プラセボ対照試験(RCT)
対象:健常成人40名(うち最終解析対象37名)
介入内容:ケストース3g+イヌリン3gを毎日、4週間摂取
評価項目:腸内細菌叢解析(16S rRNA)、GH32遺伝子量(qPCR)、食事内容(BDHQ)


<研究成果>
本研究では、フルクタン系プレバイオティクスの摂取により、ビフィズス菌の一部が明確に増加することが確認されました。特に、フルクタン分解に関わる酵素遺伝子(GH32)を持つ菌が強く応答し、腸内発酵に寄与することが示唆されました。一方で、すべての参加者が同じ変化を示したわけではなく、腸内細菌の変動には「反応する人」と「反応しにくい人」が存在することも明らかになりました。
さらに、その応答性には日々の食事内容が影響を及ぼしている可能性が認められました。特定の栄養素を多く摂取している人ほど腸内細菌の変化が大きい傾向がみられ、プレバイオティクス効果が個々の食習慣に左右されることが示された点は重要です。
これらの結果から、腸内細菌の働きと食事パターンの関係を理解することで、一人ひとりに適した栄養アプローチの実現に近づく可能性が示されました。


<今後の展開>
本研究では、プレバイオティクスへの反応に個人差が生じる背景として、腸内細菌の遺伝子特性だけでなく、日々の食事内容が大きく関わる可能性が示されました。本知見を踏まえ、プレバイオティクス効果を予測できるバイオマーカーの探索・開発や、より多様な年齢層・食習慣を持つ対象者を含めた腸内細菌の働きと食事パターンの関係性の検証を進めていきます。
これにより、個々の腸内環境や食生活に合わせた個別化の栄養指導を実現し、“プレバイオティクスが効きやすい食事パターン”の提案にも取り組んでいき、より効果的なプレバイオティクス活用法の開発につなげたいと考えています。



<文献情報>
論文タイトル:
Host Dietary Nutrients Shape GH32-Mediated Microbial Responses to Prebiotic Fructans: A Randomized Trial

著者:
高橋秀明1,2,3、藤井匡2,3,4、山田千佳子1、近藤修啓2,5、倉満健人2,6、舩坂好平2、大野栄三郎2、廣岡芳樹2,3,4、栃尾巧2,3,4、藤木理代1

所属:

名古屋学芸大学大学院 栄養科学研究科
藤田医科大学 医学部消化器内科学講座
株式会社Biosis lab
藤田医科大学 医学部医科プレ・プロバイオティクス講座
ウェルネオシュガー株式会社
名古屋大学 大学院生命農学研究科


DOI:10.3390/foods14234090 


本件に関するお問合わせ先
学校法人 藤田学園 広報部 TEL:0562-93-2868 e-mail:koho-pr@fujita-hu.ac.jp
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