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皆さんは、「経年美化」という言葉から、どんな風景を思い浮かべますか。
時間が流れるほどに味わいを増し、そこに佇むだけで心が落ち着く——そんな空間が日常の中にあったら、暮らしがより豊かになりますよね。今回は、月日を重ねるほどに美しさを深めていく庭を備えた、大阪府の集合住宅・K様邸をご紹介します。
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K様邸
このプロジェクトを手掛けたのは、積水ハウス大阪北シャーメゾン支店のエクステリアデザイナー齋藤 英です。K様からのご要望は、「年月が経過しても、長く魅力的な空間をつくって欲しい」というものでした。芸術や建築に造詣の深いK様と打合せを重ねながら、こだわりの賃貸住宅を実現しました。
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積水ハウス 大阪北シャーメゾン支店 齋藤 英
コンセプトは「エイジング」
齋藤は今回の設計を次にように振り返ります。「K様から、『月日が経過しても美しく、長く愛され、年月を重ねて美しくなるようにして欲しい “エイジング”を意識して欲しい』というお話を伺い、コンセプトを“エイジング”にしました。完成した瞬間がピークではなく、年月を重ねるほどに魅力が増す空間です」。K様は当初、敷地いっぱいに建物を配置したため、造園スペースが少ないことがマイナスと考えておられました。しかし、齋藤は、あえてその制約を強みに変えた提案をしたのです。「スペースが限られているからこそ、大きな石や流木を使えば、逆に迫力が生まれます。思い切ってダイナミックな造園にしましょう。」このご提案に、K様は快くご承諾をしてくださいました。
手描きスケッチから生まれた信頼
設計の過程で、齋藤はあえて手描きのスケッチを提示したと言います。「最近では、CADのパースが主流となっていますが、私は造園について、基本、お任せして欲しいと考えています。なので、K様にも手描きの資料を作成し、『こんな雰囲気のものができます』とお伝えしました。打合せを重ねるうちに、K様も『お任せします』と、言ってくださるようになりました。」
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齋藤が描いた手書きのパース
限られた敷地で魅せるダイナミックな造園
建物正面は駅へと続く通りに面し、通勤・通学で多くの人が行き交います。2方向道路に接した細長い敷地で、奥行きは深くありません。こうした限られたスペースでの4階建の建物です。前面道路の幅が限られているため、樹木は上へ伸ばすのではなく、枝を横に広げる樹形を選択。歩く人の目線に緑が広がるよう植栽を配置しました。
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歩く人の目線に緑が広がるよう植栽
“エイジング”と“自然素材”をキーワードに、床材には外から内へと続く「鉄平石」を選択。さらに、素材としての石を強調するため「景石」を使用。限られた奥行きには一見不釣り合いとも思える石を使うことで迫力を出しました。
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室内から見た庭。道行く人々に自然素材がもたらす癒しを届けています。
庭の一角には、流木の腕木を活かした「小水景の庭」を設けました。地窓を通じて、外と内がゆるやかにつながり、どちらからも“潤い”と“艶”を感じられる設えです。北側の庭であることから、植栽は落葉樹を中心に構成。冬場の落葉期にも日差しを取り込みやすくしながらも、幹の太い樹木を選ぶことで存在感をアピールしました。大きな景石と相まって4階建て特有の圧迫感を和らげ、入居者だけでなく道行く人々にも潤いと艶、自然素材がもたらす癒しを届けています。
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設置場所をイメージしながら行う作業
目線で感じる緑の豊かさ
エントランスの造園は、沿道を行き交う人々の視線も意識しながら計画されました。4階建ての建物では本来、大きな樹を植えることが多くなりますが、前面道路の幅が限られているため、樹木を上へ伸ばすのではなく、目線の高さに枝葉が横へ広がる植栽としています。
植栽には、積水ハウスの庭づくり「5本の樹」計画の樹種である「日本の在来種を中心に、イロハモミジやノムラモミジなどのモミジ類、マユミ、ドウダンツツジ、ミツバツツジ、ヤマツツジといったツツジ類を多く選定しました。
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目線を意識した植栽
庭は植栽だけで構成するのではなく、大きな流木と石を組み合わせました。玄関を入った先にはラウンジがあり、足元から見える坪庭には、腕のような形をしていることから「腕木」と呼ばれる流木を配置。その周辺には苔を敷き、落ち着きのある表情を演出しています。また、自動潅水と連携させることで、腕木の先から水滴がぽたぽたと落ち、水が跳ねることで苔に潤いと艶感を感じてもらえるようにしました。水辺を設けることで野鳥が訪れるだけでなく、沿道を行き交う人々にも心地よさを感じてもらえるよう配慮しています。
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腕木の先から水滴がぽたぽたと落ち、水が跳ね苔に潤いや艶感を感じさせる様子
緑へと誘う動線と建築思想が息づく空間
階段は、正面から奥へ向かって徐々にレベルを高くし、奥まで緑がよく見えるようにしました。1階から2階へ促すように、4mを超える背の高い流木を配置し、その手前に石を添えています。これにより、2階からも流木の存在を感じられる立体的な演出となっています。
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1階入り口正面に迎えるダイナミックな流木
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2階共用階段室からも見える流木
こだわりは外構だけにとどまりません。オーナーのK様はアメリカの建築家、フランク・ロイド・ライトの大ファン。
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インターフォン上のフランク・ロイド・ライトデザインの照明
時を重ねても価値を増す賃貸住宅を目指して
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オーナーのK様
「20年経っても美しく、趣のある賃貸住宅をつくりたい」という強い思いから、私は建築の際に“エイジング”を意識してほしいと齋藤さんに伝えました。建物は時間とともに価値が下がりますが、私はオーナーとして、ヨーロッパの建築物のように古くなっても魅力が増す建物“いい年のとらせ方”をしたいと考えています。自分の子どもに引き継ぐとき、くたびれたものではなく、誇れる建物を渡したい。そのために、素材やデザインに徹底的にこだわりました。見学会で実物件を確認しながら、すべてを納得して決定できたのは、素晴らしいチームのおかげです。思い描いていたことをすべて実現できたことに、心から感謝しています。
そして、この賃貸住宅は、ただ住む場所ではなく、入居者の方々には「特別な体験」を提供したいと考えています。室内に入るとジャズが流れ、エレベーターを待つ時間さえ心地よい、そんな柔らかな雰囲気を大切にしています。家賃を払うことに納得感を持ち、誇りを感じてもらえる空間を目指しました。
また、これからの時代は、外構で価値を高める時代だと考えています。
デザイナーの想い:小さな庭が紡ぐ生態系
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齋藤は、今回のプロジェクトで特に大切にした想いがあります。
「5本の樹」計画の庭づくりは、「どんなに小さな庭でも、生態系に寄与することはできます。奥行きが狭い、間口が限られているといった立地条件であっても、諦めずに庭をつくることで、生き物を呼び込むことはできます。さらに“小さな水景”を設けることで、その可能性は大きく広がります。水を張り、蝶を呼び、鳥を呼ぶ。その生命の営みを見て、人は幸せを感じるのです。そして、そうした月日を重ねることで、庭の深みが増し、人は魅力を感じ、経年美化となるのです。それが、我々ランドスケープデザイナーの腕の見せ所です。」
積水ハウスのシャーメゾン賃貸住宅
https://www.shamaison.com/
積水ハウスの「5本の樹」計画
https://www.sekisuihouse.co.jp/gohon_sp/
積水ハウスの庭づくり
https://www.sekisuihouse.co.jp/exterior/