この成果は、難分解性ポリオレフィン系プラスチック(注2)の微生物による分解処理の効率化を実現する上で重要な一歩となります。
本成果は、2026年3月10日の日本農芸化学会2026年度京都大会で発表されます。
研究のポイント
P-Life含有PPの分解菌のゲノム解析を実施した。
P-Life含有PPを熱処理した低分子化合物を炭素源として、遺伝子発現解析を行った。
β酸化経路などを使って代謝分解を行っていることを明らかにした。
研究の背景
近年、自然環境へのプラスチック流出と蓄積が大きな社会問題となっています。特に、PPをはじめとするポリオレフィン系プラスチックは自然界での微生物分解が非常に困難です。こうした中、ピーライフ・ジャパン・インク株式会社によりポリオレフィン系プラスチックに生分解性を付与する添加剤P-Lifeが開発されました。P-LifeによってPPは、徐々に官能基を持つ低分子化合物へと変化し、それらは自然環境に生息する微生物によってゆっくりと代謝分解されます。本研究グループは昨年度、探索源や分離条件を工夫することで分解菌の単離と取得にはじめて成功しました。本研究では、分解菌のメカニズムを解明するため、ゲノム解析と遺伝子発現解析を実施しました。
研究の内容・成果
本研究では、単離に成功した分解菌「T6-1株」がP-Life添加PPを分解する詳細なメカニズムの解明に取り組みました。
通常、T6-1株がP-Life添加PPを食べる場合、分解速度は極めて緩やかで分解に関連する遺伝子の発現変動が少ないと予想できました。
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図1 変動遺伝子の解析
さらに、これらの発現が上昇した遺伝子を詳細に解析したところ、脂肪酸のβ酸化経路に関連したものを複数見出しました。
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図2 P-Life-PP低分子の分解メカニズムの模式図
今後の展開
本研究により、T6-1株によるP-Life添加PPの分解菌による分解メカニズムを明らかにしました。今回、T6-1株の分解経路が特定されたことで、今後は遺伝子操作による分解効率のさらなる向上が可能となります。さらに、T6-1株の代謝を改変することで、プラスチックを炭素源として有用物質を生産す「アップサイクル」への道筋が開かれたと考えられます。本研究で得られた分解菌の知見は、難分解性プラスチック問題の解決に向けて重要な貢献を果たすことが期待されます。
「学会発表情報」
日本農芸化学会2026年度京都大会、3月10日、同志社大学今出川・室町キャンパス
演題:P-Life添加ポリプロピレンの分解メカニズムの解明
演者:二木 彩香、黄 穎、冨山 績、安倍 義人、内山 修二、橋本 則夫、宮本 憲二
「研究費」
本研究は、JST共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)JPMJPF2111 の支援により行われました。
「用語説明」
(注1)P-Life:微生物分解が困難とされる難分解性プラスチックを、微生物分解へと導く画期的な添加剤です。難分解性プラスチックは、P-Lifeにより官能基を持つ低分子化合物へと変化し、微生物により分解されやすくなります。
(注2)ポリオレフィン系プラスチック:単純なオレフィンをモノマーとして合成された高分子化合物の総称です。代表的なものとして、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)があります。一般的に、微生物による生分解は困難です。
(注3)遺伝子発現解析:細胞において、どの遺伝子がどれくらい働いているかを調べる手法です。今回用いたRNA-Seqは、mRNAの塩基配列を次世代シークエンサーで網羅的に読み取ることで、遺伝子の発現量を定量的に解析する手法です。
(※)安倍義人は、株式会社伊藤園のグループであるSI樹脂産業株式会社で本研究に専念し、その後、事業譲渡先となった同グループの株式会社グリーンバリューを退任しています。