地域創生ソリューションでは、観光ファンド「ALL-JAPAN観光立国ファンド」の運営を通じて国内各地で投資を行い、観光振興を通じた地域活性化を図っています。ファンドは地域の枠を超え47都道府県全てを応援しており、日本を代表するデベロッパー、航空会社、旅行会社、ホテルオペレーター、金融機関等のネットワーク・ノウハウを最大限に活用し運営しています。
こうした投資先のひとつに、岡山県倉敷市の美観地区に所在する料理宿「撚る屋(よるや)」があります。
こちらは地域創生ソリューションと倉敷に支店を有する山陰合同銀行がタッグを組み、投資を通じて伝統的建造物を改修・再生。2024年11月のオープン以降、宿泊客はじめ各方面で高評価を獲得しており、2025年7月にはマリオットと提携するライフスタイルホテルコレクション「Design Hotels」に加盟しました※1。伝統的建造物の加盟は国内においても希少な事例です。
※1:「Marriott Bonvoy」を通じてポイントでの宿泊も可能
国内観光におけるインバウンド需要の伸長が著しい中、「撚る屋」はオープンから1年を迎え、支配人の宮崎 敦氏は現在を“第二の創業期”と位置づけています。地域の伝統的建造物はどのような背景をもって料理宿として再生され、どのようにして高評価を獲得し「Design Hotels」加盟を果たしたのか。また、今後の展望はなにか。観光産業が大きく成長・変化し、古民家再生型の宿泊施設が増加するなかで、その成功事例を紐解いていきます。
「撚る屋」 施設概要
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■名称
撚る屋(よるや)
https://yoruya-kurashiki.com/
■所在地
岡山県倉敷市東町2-7(倉敷美観地区内)
■開業日
2024年11月14日
■客室数
13
■客室タイプ
スイート(76㎡・1部屋)
ジュニアスイート(60㎡~70㎡・2部屋)
メゾネット漆喰(52㎡・4部屋)
メゾネット煉瓦(48㎡・3部屋)
スタンダード(30㎡・3部屋)
■支配人
宮崎 敦
オープンに至るまで―投資と伝統的建造物再生の背景
地域創生ソリューションでは、不動産新規開発のほか、既存の資源を活用した開発(改装、コンバージョンなど)にも積極的に投資を行っています。
「撚る屋」の元となった伝統的建造物は、明治期に栄えた呉服屋の別邸として 110 年以上前に建てられ、近年は未活用となっていました。所有者は当初、未活用のまま外部売却を予定していましたが、その後地元事業会社の代表が街並みを守るために本施設を取得しました。
「ALL-JAPAN観光立国ファンド」と山陰合同銀行からの投融資は2022年9月より行い、2024年11月に「撚る屋」としてオープンしました。その後もタッグを組んだ伴走サポートは継続しており、宮崎支配人はこの体制について「運営上の大きな強み」と語っています。
「地域との連携がスムーズに進み、作家さんなど様々な方との関係構築ができています。地域コミュニティへのスムーズな参画と、Win-Winの関係構築に繋がるのでありがたいですね」(宮崎支配人)
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なお倉敷の長きにわたる課題として、中国地方を代表する観光名所である一方で日帰り客が多く、宿泊拠点になりにくいという点がありました。本プロジェクトの根幹には、「滞在を通して倉敷の魅力を深く体験できる」施設を整備するというコンセプトがあります。
「倉敷は観光地でありながら、日常の営みをすぐ近くに感じられる点が希少であり魅力です。朝の美観地区の静けさや生活風景、また夜の雰囲気などはとても美しいもので、これらに触れることができるのは宿泊ならではの体験です。まさにこうした観光と日常が折り重なった風景が、ゲストのみなさまにとって新鮮な魅力となり、ご満足をいただいている大きなポイントです」(宮崎支配人)
名称に込められた想い―“暮らすように泊まる”体験設計と“第二の創業期”
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「撚る屋」の名称には、土地の歴史や風土、人の営みと旅人の時間をひとつに結び合わせ、倉敷の歩みに「撚る屋」自身も撚り合わさっていくという想いが込められています。独自の文化・芸術に触れ、滞在を通じた発見が連鎖する体験を核に「人を撚る」を具体化し、伝統建築の保存を前提とした運営と、地域の生活に寄り添う“暮らすように泊まる”体験設計が理念となっています。
こうした点を重視しながらオープンから1年を迎え、宮崎支配人は現在を“第二の創業期”と位置づけています。
「体験価値の磨き上げと品質向上を推進しています。ゲストの価値観を踏まえながら、今後はさらに価値設計を重視していきます」(宮崎支配人)
地域との繋がり―ハブとしての役割
国内外のゲストが数多く訪れる中で、名称や理念にも込められているように、「撚る屋」は地域との繋がりを非常に大切にしています。宿泊だけでなく、ゲストに対する地域情報のハブとなることで、外部施設のほか、連泊時の食事先紹介などの導線も強化しています。
「地域の文化・芸術へのアクセス設計が、国際水準のホスピタリティの核であると考えています」(宮崎支配人)
また運営にあたっては、地元の魅力とその背景を伝えるストーリーテラーとしての役割を強調しており、生活に溶け込む雰囲気づくりも丁寧に行われています。
一方で、地元行政・他宿泊施設・金融機関とも積極的な連携を図っており、地域の宿泊受入態勢強化に向け、倉敷市観光課・公益社団法人倉敷観光コンベンションビューロー・小規模宿などとの取り組み「Stay Like a Local 協議会」にて50~60名規模の共同集客を行っています。
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また、地域創生ソリューション・山陰合同銀行との連携を通じて、地元を拠点とする作家・芸術家とのリレーション構築を進め、館内での器の使用・販売なども積極的に行っています。こうした流れで地域クラフトの消費が拡大しているほか、岡山県の名産品であるデニム関連店舗をはじめとして、美観地区全体での消費傾向も高まりを見せています。
「ゲストがデニムをはじめとしたショッピングや飲食を楽しまれるなど、地域への直接的な経済活動が見られます。ご自身の価値観を最も大切にされるゲストも多く、例えば地元作家のグラスをたくさん購入して自国へお持ち帰りになるといった方もいらっしゃいます」(宮崎支配人)
「Design Hotels」への加盟―小規模ならではの温かみと高水準のおもてなし
「撚る屋」は2025年7月、マリオットと提携するライフスタイルホテルコレクション「Design Hotels」に加盟しました※1。「Design Hotels」は世界中の個性豊かなホテルを厳選したコレクションで、加盟には「独自性」や「地域とのつながり」、「デザイン性」が高次元で重視されます。
「撚る屋」は、倉敷の歴史や文化を背景に、新旧を調和させた建築や、現代の旅人に向けて地域の魅力を新たに提案している点が高く評価され、加盟に至りました。
「これにより、国内外のより多くのゲストに『撚る屋』を知っていただくことができました」(宮崎支配人)
運営面では、「Design Hotels」加盟施設として、国内外のゲストに向け数多くの工夫が凝らされています。
「消防・消化設備などの安全基準は最優先で対応しつつ、『撚る屋』のよさと『Design Hotels』のブランドスタンダードとのバランスをうまく確保しています。私自身が外資系ホテルチェーンに勤務していた経験を活かしつつ、国際ゲスト対応とサービスプロセスの標準化、スタッフトレーニングに力を入れています。小規模ならではの温かみを保ちつつ、高水準のおもてなしを徹底しています」(宮崎支配人)
築110年の継承と革新―改修・再生の工夫
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こうした中でも、築110年以上の伝統的建造物を改修・再生し、さらに宿として運営していくには、多くの困難があります。例えば構造上の制約として数多く残る段差は、スタッフによるサポートで補完するなど、小規模運営ならではのきめ細やかな対応を重視することでホスピタリティ向上に繋げています。また、木造建築のため歪みや経年変化が生じることもありますが、適宜工事を行い対処しているほか、冬季は効率的な暖房運用を行うなど、工夫を凝らして快適性を確保しています。
「非日常性と快適性の両立をうまく図りながら、こうした点も魅力として伝えられるよう努めています」(宮崎支配人)
一方、こうした建造物だからこその発見もありました。例えばジュニアスイートの施工計画時、壁の奥に埋もれていた美しい土壁意匠を「発見」。従来予定していた計画を変更し、意匠を保存しデザインとして活かす方向へ転換しました。こうした偶発的発見もまた価値としながら、空間の独自性を強化しています。また、東町通りに面した大正ガラスや窓枠は当時のまま保存されています。
「大正ガラスは、損壊すると修復することはできません。例えばこのガラスであれば工事前に取り外すなど、伝統的建造物の改修・再生においては、運用上十分注意しながら現存材を保存することがアイデンティティの維持に不可欠です」(宮崎支配人)
「古民家ホテル」人気の中で―成功の鍵はソフトの魅力
人口減少社会において、古民家・空き家の再生は大きな注目を集めています。こうした中で、いわゆる「古民家ホテル」は有効な活用法として人気ですが、必ずしも成功するわけではありません。成功の鍵はどこにあるのか、宮崎支配人は「撚る屋」の運営を通じて、「ソフトの重要性」をポイントに挙げます。
「様々な社会課題がある中で、古民家・空き家の再生は今後必須の取り組みであると考えます。しかし、成功の鍵は建物、つまりハードだけではなく、地域の伝統や歴史を語り伝え、エリアとゲストを繋ぐ人、つまりソフトの魅力にあるのではないでしょうか。『撚る屋』の運営においても、この点を重視し、ゲストと倉敷を繋ぐ体験づくりを大切にしています」(宮崎支配人)
今後の展望―持続可能な観光地づくり
今後はハブ&ストーリーテラーとしての役割を通じた価値設計を強化していく予定です。
「『撚る屋』をハブとした、より広域なアクティビティの動線設計を進めていきたいと考えています。また、大原美術館の特別ツアー、備前焼作家との交流、オンリーワンのデニム制作体験、瀬戸内海のプライベートクルーズなど、唯一無二の体験コンテンツをさらに強化していきたいです」(宮崎支配人)
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また、地域と共生する「持続可能な観光地づくり」へのコミットも強化していきます。
「地元の方々からは、『ゲストのみなさんはマナーがよく、楽しそうに過ごしていてこちらもうれしくなる』『撚る屋ができてよかった』といったありがたいお言葉をいただきます。これからも、いわゆる『観光客』というだけでなく、地域の暮らしに寄り添う、“暮らすように泊まる”宿泊体験を提供してまいります」(宮崎支配人)
関連リンク
地域創生ソリューション
https://kankou-japan.jp/about/
撚る屋
https://yoruya-kurashiki.com/